「入院できなくなる」病床数に空きがあっても受け入れできない状況に【医療崩壊を防ぐために】
全国で新型コロナウイルス感染者が急増するなか、東京都病院協会は12月18日「現在、東京都では医療崩壊直前です」と緊急メッセージを発表。同協会の東海林豊常任理事(渉外・広報・会員組織委員会委員長)に、都内の病院が直面する現状について話を聞きました。(ニュースVoice編集部)
ーー緊急メッセージを出した背景とは? 東海林氏: 今月15日の東京都病院協会の理事会で、新型コロナウイルス感染者の増加率が1.2倍から1.3倍という東京都のモニタリングデータの報告がありました。このまま放っておくと、年末には1000人を超える。1000人を超えると調整が不可能となり、入院がままならない人が増えてしまうため、今回このようなメッセージを出しました。 例えば1000床のベッドが空いていると言っても、1カ所所で1000床が空いているわけではなく、いろいろな病院に分散して存在しています。1病院に10床程度しか持っていませんし、10床空いているからといって、1日に10人の入院患者を受け入れられるかと言うと、医療従事者の人員の問題でどうしても調整がつかない。そして、次の日にまた入院の調整がつかない人数が出てきます。先日、広島、横浜で軽症だった人が突然亡くなられたというようなことがあったが、これから東京でも同じことが起こる可能性があるということ。心筋梗塞なり脳梗塞なり脳卒中の人たちが入ってくるベッドさえなくなってしまうという、本来助けられる人が助けられなくなってしまいます。
看護師のおかれる現状と解決すべき課題
東海林氏: 新型コロナを扱う病院は、看護師はそこにずっといなくてはいけないので、予防着「PPE」を脱いだり着たりというような業務が増え、また、それを絶対自分の家庭内に持ち込まないようにしないといけないので、病院と自宅の行き来だけというようなことになります。あとは「レッドゾーン」と言われる患者さんがいるところですけれども、そこで、トイレの掃除なども自分たちがしなければいけないというように、業務が全部看護師さんに集中してきてしまっており疲弊しているという状況です。 ーー関連する報道にも、看護師の方たちの窮状を訴える多くのコメントが寄せられていました。今後、解決すべき課題とは? 東海林氏: 看護師の配置基準というのが決まっています。「患者さん10人に対して看護師を1人配置しなさい」という配置基準です。忙しいからといって、看護師さんをどんどん増やしていけばいいということではありません。というのは、10対1の入院基本料しか保険が下りてきません。多くの人が入退院し稼働率がアップして忙しいからといって、一般企業のように給料や人員を増やすというわけにはいかないというのが現状です。 診療報酬改定が削減、マイナス改定というようなことになっているので、全体としては、やはり診療報酬のプラス改定にしてもらわなければ、医療の働く現場の人に還元できないということになっていきます。 与えられた制度の中で患者さんを診ていかなければいけませんので、そこはみんな、使命感であったり、本当に倫理感を持ってやっていますが、私の個人的な意見ですけども、看護師さんも医師も、個人の「看護師の使命感」「医師の使命感」の犠牲から成り立つ医療は、もう終わりの時代が来たのではないかなと思っています。きちんと業務を評価して、それに合った賃金体系を作っていかなければならないと思います。
東京都病院協会から今伝えたいこと
東海林氏: これだけ新型コロナ感染者が増えていくという予想が立てられているので、みなさんには自分で感染しない、あるいは、感染しても移さないということに徹していただきたい。そうでなければ、本当に助かるべき人が助けられないということが起きてしまいます。自分たちの家族にかからないようにと考えながら、行動していただきたいなと思います。政府には、そういうことが起こらないように政策をきちっと立ててほしい。みなさんには、正月までに感染者が1000人を超えないように、感染を広げないようにしていただきたいと思います。お願いいたします。