「現ドラの記事も目には入ってきました」――DeNA坂本裕哉の“下剋上物語” 苦心が続いたドラ2左腕が開花したワケ【独占】
“あのとき”の輝きよりも眩しく――
シーズン終盤に投球スタイルをブラッシュアップさせて臨んだクライマックスシリーズ。甲子園でのファーストステージでは、初戦の3点リードの7回、佐藤輝明と前川右京の左打者からの連続三振を含む三者凡退。2戦目も3点リードの6回、ランナーひとりを置いた場面でキッチリと火消しに成功した。 「苦手なんですけど、ここは(悪いイメージを)払拭するチャンス」と強いハートで乗り込んだ東京ドームでも躍動。初戦は一打同点のピンチで中山礼都を打ち取り、2戦目も秋広優人を空振り三振と、6戦中4戦に登板し無失点と日本シリーズ進出に貢献した。 日本シリーズではソフトバンクと対峙。福岡出身の坂本は「ファンでしたがホークスを倒します」と意を決し、横浜での初戦は1イニング、2戦目はワンポイントで無失点投球を披露。地元の福岡では第4戦にシリーズ初ホールドをマークした。第6戦では打線が爆発した9点差の場面に出番が回り、「2点差のつもりで準備していたのですが、気が緩んだらやられる」と引き締め直し、2イニングを投げ切り勝利投手となった。 最終的にポストシーズン14戦中10登板で無失点。坂本は「左キラー」としても、貴重な存在となった。「よりプレッシャーのかかる試合のほうが、力を発揮できるようになりましたね。そのくらい自分に対して自信を持てるようになりました」と語る姿は、過去のメンタルとは別物だった。晴れ舞台での勝ち星は、ポジティブが好きな野球の神様からのプレゼントかもしれない。 今オフも昨年同様に“森原塾”に参加。「今年出来たことをベースに、すべてにおいてレベルアップしたいですね。球種とかは特に増やさずに、またコツコツとやっていきます」と意気込む。 「身体ももっと大きくして、今年アベレージで148くらいだったストレートの球速を150キロ台に乗せたいですね」と具体的な目標も設定する坂本は、「やっぱり師匠の森原さんを越えることが恩返しですよね。守護神の座も狙わないといけないです」とキッパリと言い切った。 決して順風満帆ではなかったプロ生活。幾多の経験と努力を元に復活した左腕は、“あのとき”の輝きよりも眩しく、一等星の如く光り続ける。 [取材・文/萩原孝弘]