「“自己流”パーフェクトジオング」の着想はサイコザクのロケットブースターから!圧倒的推進力、機動力重視で「異次元なジオング」を表現
“推し活”を応援するトレンドメディア「Fandomplus」では、編集部が衝撃を受けた“推しガンプラ”を連載で紹介していく。本稿では、“工廠で整備中のジオング”を製作し、「全日本オラザク選手権」で金賞も受賞したモデラー・ヨッシー烏製作隊(@uta_12241129)さんにインタビューを実施。 【写真】最強×最凶のジオング爆誕!背中のロケットブースターが“漢のロマン”すぎる 製作にいたる経緯や、製作過程で最も苦労したポイント、この作品を通じて学んだことなどを振り返ってもらった。 ■サイコザクを見て「これ絶対、ジオングに付けたらすごいことになる」 ――本作品を製作するにあたり、どのようなアイデアやインスピレーションがありましたか? 数年前の作品になりますが、私にとっても過去一で力の入った作品、時間のかかった作品であると思っています。作品を作るにあたっての経緯ですが、とにかく一度作ってみたいキットだったんです。しかし、ジオングというモビルスーツをカッコイイと思った記憶がなくて……。 幼いころ、アニメのなかでは最後にして最強の敵だったので、興奮した記憶はありますが、もう大人、いやオジサンになってあらためて見たときは「コレじゃないなぁ」って印象でした。原作や原型を否定するわけじゃなく、私だったらこんなのがいいな、私ならここはこうだな、とか、勝手に自分好みに想像してみたり……。製作を始めるときの方向性は、とても子どもっぽい表現なのですが「異次元なジオング、もう次元が違ってる」みたいな(笑)。発想がちびっこ並みで恥ずかしいですが。 実際に手を動かすまではけっこう時間がかかり、いろいろな構想をくり返していました。私はガンダムシリーズのなかでも「機動戦士ガンダム サンダーボルト」の世界観が好きなのですが、そのとき売っていたサイコザクがめっちゃカッコよくて!ザクのカッコよさもですが、背中に付いている、あのでっかいタンクが印象的で「これ絶対、ジオングに付けたらすごいことになる」と思い、これを装備させて圧倒的推進力、機動力を持ったジオング、脚はなくでも私なりのパーフェクトジオングにしようって方向性ががっちり固まりましたね。 ■完成まで2年、難しいのはモチベーションの維持 ――製作過程で難しかった部分は? ジオング単体の製作ではありますが、情報量の追加であったり、各パーツの大型化など、スクラッチする部分がかなりあって。塗装前の姿を見ていただければわかってもらえると思うのですが、白色の部分がかなり多いんです。その辺りは、作っては潰して……という作業が何回もあって大変でしたね。 また、でっかいタンクを装備したジオングを、どうやってジオラマにしたらいいのかも悩みました。何かしらのポーズを取らせて、あるひとつのシーンをジオラマ化しようと思ったのですが、サイズの問題もあり、それはなかなか難しくて……。考えた末、アクションのある構図はあきらめて、工場とか基地の工廠(こうしょう)に格納されている風にしようと思考を変え、製作にかかることにしたんです。それでも納める大きさには手がかかりましたし、プラ棒を無数に切り出ししてトラスを組んでいるときは、正直、気が滅入りました。そんななか、当時の「全日本オラザク選手権」で大賞を受賞された、まんねん工房(@hide94373)さんのビクザムのジオラマに衝撃を受けて。そのおかげで、モチベーションを高めることができました。 一番大変だったのは、ジオラマ部分に入ってすぐに父が他界したため、いろいろとやらなければならないことが増えてしまって。それでモチベーションが一気に下がってしまったことですね。模型に取り組めない時期が長く続いたので、造形の難しさよりも、いかにして気持ちを上げていくか……というのが問題でした。完成まで2年ほどかかってしまい、その間のメンタルの浮き沈みなどのコントロールは大変でした。 ――今回の製作において、最も楽しかった部分は何でしたか? 先のコメントにも書きましたが、変えたい部分とか、存在しない部分をプラ板からスクラッチして、自分で思うように作り上げていく作業は楽しかったですね。失敗もたくさんしましたが、思った感じになったときは「やった!」となります。あとはジオングに動きがない分、周りの人形さんたちに動きを任せることにして。100体ちょっと作りましたが、情景にマッチングしたときは、しんどかったけどやってよかったと思いました。 ――この作品のなかで特に気に入っているポイントはどこですか? 自分なりのパーフェクトジオングは納得いくできだったので、単体でも気に入っています。ただ、製作途中でRGジオングが発売されたのにはビックリしましたね。「なんてカッコいいんだ」と思いながら、アンテナ部分の形状をこっそり拝借しました。おかげでこちらのジオングも、迫力のある感じになったのでよしとしています。 それと、このジオラマでいい仕事をしてくれているのが、タンク運搬用の6輪車両と、シャア大佐と技官が乗っている昇降テーブル、そしてタンクとバックパックを設置している天井からのロボアームです。6輪車両がないとタンクを支える物がありませんし、このジオラマ自体が成り立ちません。ロボアームも作業中の様子を醸し出していて、いい感じになっています。昇降テーブルも、アニメよりもリアルなそれらしい感じに作りました。その甲斐あって、シャア大佐と技官の“あの有名なシーン”も再現することができました。 ――この作品を通じて、新しい発見や学びがありましたか? ほかの取材でもお答えしたことがあるのですが、自分のガンダムアニメの知識のなさには毎回苦労しています。知識を増やす作業をしていないので当然ではあるのですが、私の場合は元ネタを知らないからこそ浮かぶ発想とか、知らないからこそ思いつく大胆なストーリーなどを形にしていて。それに共感してくださる方もいて、毎回、ありがたいなぁと思っています。もちろん、いろいろ言われることもありますが、どちらの言葉もガンダムアニメ好きな方の率直なご意見だと思って、真摯に受け止めています。 ガンダムのプラモデルを主に作っていますが、模型をするようになってから、いろいろなことを考える癖がついたように思います。模型はボケ防止になると聞いたことありますが、本当かもしれないですね。いろいろ考えて想像を膨らませる。それを形にするために手を動かす。そこに作る楽しみがあります。そして模型は作るだけでなく、それを見て楽しむことができるし、自分以外の人に見てもらったり、誰かが作ったものを見る側になって楽しむこともできます。たかが趣味とはいえ、こういうところに本気になれる要素があって、そこに私ものめり込んでいるのだと感じています。 今ではライフワークでもあり、模型は自分を表現できる場所だと思っています。模型仲間もできて、人とのつながりもできて、これって最高じゃないですか?ただ、気をつけないといけないのは、寝る時間が少ないのと、有機溶剤を使うのでその取り扱いですね。長く楽しみたい趣味なので、こうした点には十分注意して、これからも自分を表現していきたいです。 (C)創通・サンライズ 取材・文=ソムタム田井