見どころは“じれキュン‘’だけじゃない! TVドラマ『ハマる男に蹴りたい女』の魅力をひも解く
コミック誌『Kiss』(講談社)で連載中の天沢アキの同名コミックを、藤ヶ谷太輔主演で実写化した連続ドラマ『ハマる男に蹴りたい女』のBlu-ray BOXとDVD-BOXが、11月29日に発売される。アーティスト活動と並行して、数々の映画やドラマ、舞台に出演し、バラエティ番組でもMCを務めるなど幅広いジャンルで活躍する藤ヶ谷が、“ラブコメディ”に体当たりするとあって、放送前から大いに話題を集めていた本作。だが、注目すべきは“じれキュン”要素だけではない。仕事一筋のエリートが人生初の挫折を経験し、あがくことで、周囲にも影響を及ぼしていく様を、絶妙な匙加減で演じた藤ヶ谷の“座長”としての力量だ。
藤ヶ谷演じる元エリートが、一日で仕事も家庭も失いレトロな下宿の管理人に!?
2023年1月14日からテレビ朝日のオシドラサタデー枠で、「人生の沼にハマッた元エリート管理人と、ズボラなお仕事女子が繰り広げる、オトナの一つ屋根の下ラブ」と銘打ち放送された本作において藤ヶ谷が演じたのは、大手飲料メーカーで商品企画を担当するエース社員・設楽紘一。出世コースを駆け上がり、外資系バリキャリで家事も完璧にこなす妻・夏美とタワーマンション暮らし。誰もがうらやむエリート人生を歩んでいたものの、強引な仕事ぶりがアダとなって突然左遷させられることになった紘一は、「これは事実上のリストラだ」と気付き、自ら退職届を突きつける。「夏美なら、この理不尽な状況を理解してくれるはずだ」と思い帰宅するも、なんとテーブルの上には一枚の離婚届が――! たった一日にして仕事も家庭も一気に失ってしまった紘一は、BARの店主である幼なじみのナオ(西田尚美)の紹介で、WEB制作会社で働くバリキャリだが、プライベートはズボラ女子のいつか(関水渚)と、健康食品会社勤務で、観察眼に長けた理系女子のすず(久保田紗友)が暮らすレトロな下宿「銀星荘」で、住み込みの管理人として働くことになる……。
ズボラお仕事女子との“じれキュン”と並行して描かれる、紘一の成長物語
実は、紘一はナオから持ち掛けられた仕事を、てっきり「愛人契約」だと思い込んでおり、「銀星荘」に向かう途中に、自転車で突っ込んできたいつかのことを、雇い主と勘違い。あろうことか紘一は、「俺はお前を抱けそうにない」と失礼な言葉を彼女に浴びせかけ、怒ったいつかからビンタをされるという、なんとも最低最悪な出会い方をしていたのだ。 紘一はすっかり忘れているのだが、実はいつかと紘一との間には、過去に仕事上の因縁があり、彼女の心のなかには「いつか紘一を見返してやりたい」という気持ちも渦巻いている。 だが、そんな野心とは裏腹に、いまは下宿の管理人である紘一にだけはなぜだか欲情し、思わず押し倒してしまういつか。そんな彼女を紘一も徐々に意識し始めるが、そこにいつかに想いを寄せる同僚の香取(京本大我)や紘一の元妻・夏美(早見あかり)がが絡んできて、人間関係はこんがらがっていく。 かつては仕事一筋で家のことは妻に任せきりだったからこそ、愛想を尽かされたであろう紘一が、何かと突っかかってくるいつかやすずに散々振り回されながら、エプロン姿で慣れない家事に孤軍奮闘する様は、たびたび登場するスーツ姿でビシッと決めたエリート会社員時代の回想シーンとのギャップも相まって、ファンならずとも心をくすぐられてしまう。 というのも本作は、一つ屋根の下に暮らす大人の男女のキュンキュンする恋愛模様のみにフォーカスを当てているわけではなく、仕事はできるがワンマンで思いやりがなく、他人の気持ちを一切推し量れなかった紘一が、人生で初めて大きな挫折を味わい、傲慢だが率直な物言いのいつかと出会い触れ合う中で、未熟な自分を見つめ直す成長物語でもあるからだ。