「交差点の赤信号」 意地でもルールを守る日本人、臨機応変な外国人 どちらがスマート? 交通ルールの順守について考える
交差点のモラル
「赤信号、みんなで渡れば怖くない」 一度はどこかで聞いたことのあるフレーズではないかと思う。だが、本当にみんなで赤信号を渡るなんてあり得るだろうか。今日は、ここを出発点として「ルールを守ること」について、とりわけ日本人と交通ルールの順守について話をしてみたい。 【画像】えっ…! これが60年前の「海老名サービスエリア」です(計16枚) 実際に東京の路上を眺めてみると、渋谷のスクランブル交差点であれ、新宿アルタ前の交差点であれ、信号の変わりぎわに慌てて渡る人こそあれど、堂々と信号無視をする歩行者はまれだ。 そのほかの交差点でも、ほとんどの歩行者は信号が赤になるとちゃんと止まり、往来のまったくない交差点で赤信号が青に変わるまでじっと待っている歩行者さえ(特に東京では)珍しくない。
日本の当たり前が当たり前ではない諸外国
ところが日本を出てしまうと、そうではなかったりする。 ロンドンやローマの交差点で信号が青に変わるのをじっと待っていると、信号を無視してさっそうと交差点に入っていくジェントルマンやレディに出くわす。 「車も来ないのにどうして信号を守ってるの」 と笑われることさえある。私(熊代亨、精神科医)は日本の交通マナーをインストール済みだから、 「赤信号でも車が来ていなければ進め」 という欧州の人々の行動パターンには今でも戸惑いをおぼえる。 もっと甚だしいのはベトナムだ。自動車やバイクが盛んに行き交う大きな交差点ならともかく、車道と歩道が交差するような交差点では、自動車やバイクも平然と赤信号を無視して突っ込んでくる。 じゃあ、現地の歩行者はどうやって交差点を渡るのか。しばらく眺めていて気付いたのは、ベトナムの歩行者は 「信号をそこまであてにしていない」 ということだった。彼らがもっと注意を差し向けているのは行き交う車やバイクそのものだ。それらをしっかり見て、ときにはドライバーとアイコンタクトをとりながらベトナムの歩行者は交差点を横断しているのだった。 ベトナムの歩行者は車もバイクも来なければ赤信号でも道路を渡るし、なんなら信号のない場所で道路を横切ったりもする。車やバイクが近づいて来るときにはしっかり様子を観察し、ときにはドライバーに道を渡ることをアピールしながら横断したりもしている。日本人には危険きわまりなく見えるベトナムの路上にもベトナムなりの不文律があり、歩行者もドライバーも相応に安全確保の努力を積み重ねていることは見て取ることができた。