『シューマンズ バー ブック』著者と西川口のバーの店主が語り合ったら?
1991年、500種類を超えるカクテルのレシピを掲載した書籍『シューマンズ バー ブック』が発売された。著者はチャールズ・シューマン。ドイツ国境警備隊、外交官事務所勤務を経て、イタリアやフランスと世界各国のバールやレストランで経験を積み、31歳で自国に戻り、バーはホテルにあるものとされていた1983年、ミュンヘンのマキシミリアン広場に食事もできる革新的な店をオープンした。 『シューマンズ バー ブック』は、日本では2002年に出版。出版当時、この本を購入した男がいた。埼玉県の西川口でバー、Scottish BAR CASK AND STILL(カスク&スティル)を営むバーマン(=バーテンダー)、川本将人だ。 この店名でバーを開業した当初から、川本はスコットランドへ直接買い付けに行っていたという。なんでも納得いくまでやらないと気の済まないマニアックな性格。ゆえに、スコットランドの蒸留所のウイスキーはほとんど置いているらしい。昨年もスペイサイド(英国スコットランド北東部)の蒸留所を、リュックを背負い、自転車で買い付けに回ったと聞く。ほぼすべての蒸留所のモルトがあるという話も、決して大げさではないだろう。いまや世界で注目される秩父蒸留所のイチローズモルトを、創業初期から応援していた目利きでもある。 ニューリトルチャイナの異名を持つ西川口で、規格外れな本格的バーを営む川本と、世界のバーマンの尊敬を集めるシューマンを会わせたら、どんな話が飛び出るのか? そんな興味を実行に移してみた(敬称略)。
西川口のバー「カスク&スティル」
川本将人のバー、「カスク&スティル」は、銀座や渋谷のような大都市の商業地区ではなく、東京のベッドタウンである埼玉の、いまはアジア系の店がひしめく町、西川口の駅近くにある。 チャールズ・シューマン(以下:シューマン):カスク&スティルのある西川口まで、ここ(東京)からどれくらいですか? 川本将人(以下:川口):だいたい40分弱くらいですかね。 シューマン:バーは繁盛していますか? 川本:そうですね。都会にあるスタイリッシュなバーではなく、ローカルパブのような店ですので、こんなもんかなという感じですね。昔、ウイスキーの勉強でイギリスに行ったとき、出合ったパブに影響を受けまして、そんな感じの店にしたいと思って作りました。