「幻の怪魚」アカメ、長期間存続の要因は? 福井県里山里海湖研究所などがゲノム解析
日本固有の大型肉食魚で絶滅危惧種の「アカメ」について、福井県里山里海湖(うみ)研究所(若狭町)の武島弘彦研究員らの研究グループが、少数の個体で長期間存続している要因の一つに遺伝的な特徴があることを突き止めた。ゲノム(全遺伝情報)解析の結果、全体的な遺伝的多様性は極めて低い一方、免疫などに関わる領域では多様性が高く保たれており、病原体に対する抵抗性など生存にとって重要な性質が維持されてきたことを示しているという。 【写真】アカメの幼魚 武島研究員によると、アカメのうち子孫を残した個体数は約3万年前から千年前まで千匹前後の極めて少ない数で推移していることが判明。「希少種保全のために特定の機能を持つ遺伝子に注目することも重要と分かった」と意義を強調している。 アカメは主に宮崎、高知両県の太平洋沿岸に生息している。近年、稚魚の成育に適した水草「コアマモ」の群生地が減少しており、アカメは環境省のレッドリストで近い将来に野生で絶滅の危険性が高い絶滅危惧ⅠB類に指定されている。釣り人などからは「幻の怪魚」と呼ばれている。 生態ゲノム科学が専門の武島研究員のほか、大阪医科薬科大や京都大の研究者ら7人でつくる研究グループは、宮崎、高知両県で1個体ずつゲノムを調べた。この結果、全体の遺伝的多様性は魚類では最低レベルで、レッドリストでより絶滅のリスクが高い絶滅危惧ⅠA類のトキよりも低かった。一方で、主に免疫系に関わる遺伝子が存在する複数のゲノム領域では多様性が保たれていた。 武島研究員は「アカメの進化史の一端を知れた。種の存続は予断を許さず、生育環境とともに保全を着実に進めていきたい」と話した。 研究成果は、米国分子・進化生物学会(SMBE)のオンライン誌8月号に掲載された。
福井新聞社