【解説】中国語を話せるスタッフがいない! 「中国からの団体旅行」解禁 “爆買い”も? 期待の裏で…人手不足で“対応できない”との声も
■「状況に応じて増便」「情報発信を強化」 航空業界・観光業界の声
逆に受け入れる側の日本の観光業界は、どのように受け止めているのかも聞きました。まずは航空会社です。日本航空と全日空は「状況に応じて増便を検討していく」と非常に前向きな期待感を示していました。
続いてデパートです。たくさんの観光客がお土産を買いに来ると思いますが、小田急百貨店は「団体客が来ることが確認できた時点で、仕入れ量を増やすことになると思う」と話しています。高島屋は「中国人向けに特化した情報発信を強化していく」と、やはり大手のデパートも前向きな期待感を話していました。
■解禁の背景に消費の冷え込み…中国の消費者物価指数が前の年を下回る
では、そもそも中国政府はどうしてこのタイミングで団体旅行を解禁するのでしょうか。中国の文化観光省は「経済と社会の発展に一層、貢献するため」と説明しています。 この「経済」という部分に注目して読み解いていきます。日本への旅行と聞くと、日本にお金が落ちるので、中国にとっては意味がないようなイメージを持つ人もいるかもしれませんが、団体旅行に参加する場合「中国で旅行会社にお金を払う」「中国国内の空港に行く交通費も払う」「日本で電子マネーを使うと、中国の決済会社に手数料が入る」など、これだけ大きく人が動くということは、それだけ中国でもお金が動くというわけです。10日、中国では消費者物価指数が発表されましたが、前の年を下回っており、消費が冷え込んでいるという懸念も出ていました。そこで、日本への団体旅行を解禁することで国民の消費活動を活性化させたいという狙いがあると指摘をされています。
■「スタッフがいない」「すでにパンパン」…受け入れに課題も
ここまで前向きな話をしてきましたが、必ずしもそれだけとは言えません。2つめのポイント「“対応できない”課題も」をみていきます。 団体でたくさん来ますから、態勢を整える必要があります。箱根にある旅館は「コロナ前に雇っていた、中国語が話せるスタッフは今いない。新たに雇うとなると、今非常に人手不足なので2~3か月はかかりそう」と話しています。マナーや文化の違いがあるため、中国語を話せるスタッフがいるのは受け入れの大事な課題になると思います。 さらに、大阪のバス会社にも話を聞きました。「円安の影響で、すでに他の国の外国人観光客がたくさんいてパンパンの状態。人員が不足していて、コロナ禍前のような勢いで中国人団体客が一気に来ると、とても対応できない」と話していました。「一気にではなくて、少しずつ分散して来てもらいたい」そうです。 中国から来る人の中には、リピーターの人も増えています。爆買いが復活するのかわからないところもあるうえ、行き先もどんどん多様化していき、いろんな変化があるとみられます。期待や懸念があたるのか、未知数な部分もありますが、人数が多いので対応も大変だと思います。 ◇ 日本と中国は外交的に厳しい関係が続いてきました。今回の団体旅行解禁で、中国政府が日本などとの緊張緩和に向けた期待感も背景にあるのではとみられています。経済効果も非常に重要だと思いますが、中国の人が日本文化や日本人の優しさに触れる交流の機会となれば、日中両国の関係が深まることにつながると思っています。 (2023年8月10日午後4時半ごろ放送 news every.「知りたいッ!」より)