大人にじわじわ人気。究極のメニューに挑む二人の情熱と慈愛を描いた映画
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19世紀末のフランスを舞台に、究極のメニューに挑む二人を丹念に描く、今年のカンヌ国際映画祭監督賞受賞作『ポトフ 美食家と料理人』
『ノルウェイの森』(2010年)等で知られる監督トラン・アン・ユンがフランスの著名な美食家をモデルとした小説に魅せられ、その前日譚を創造した映画『ポトフ 美食家と料理人』。『青いパパイヤの香り』(1993年)で世界中の映画ファンを唸らせた美意識を総動員して、食の芸術とその担い手を描いた本作はカンヌ国際映画祭で監督賞を受賞。アカデミー賞国際長編映画賞ノミネート必至といわれる珠玉作だ。 19世紀末、田園に建つシャトーに住む主人の美食家ドダンと料理人ウージェニーは料理への情熱を共有し、献立を練り、食材を吟味し、機能的な厨房で鮮やかに連携しながら料理に向き合う。流麗な長回しによって色とりどりの食材がダイナミックに調理されるスリリングな映像と、劇伴を排して捉えるキッチンの賑やかな音が見る者の心を浮き立たせる。映画に登場する料理の監修に加え、皇太子のお抱えシェフで登場するのは三つ星シェフとして名高いピエール・ガニェール。 【写真】美食家ドダンを演じるのはカンヌ国際映画祭男優賞を受賞した実績のあるブノワ・マジメル(中央)。料理人ウージェニーはフランスのトップ女優ジュリエット・ビノシュが演じる(右)
主人公のドダンとウージェニーは、身分の差を超えて深い尊敬と愛情で結ばれている。 シャトーの階段を登り、使用人の部屋が並ぶ屋根裏にウージェニーを訪ね、愛を囁くドダンに対し、プロ意識と自由を尊ぶ彼女はプロポーズを長年断り続けている。そんなモダンなヒロインを演じるのは、『汚れた血』(1986年)など、レオス・カラックス監督との協業から40年にわたってフランスのトップ女優として人気を集めるジュリエット・ビノシュ。 ドダン役には、『ピアニスト』(2001年)でカンヌ国際映画祭男優賞を受賞したブノワ・マジメル。ふたりは『年下のひと』(1999年)での共演を機に一児を授かった後、パートナーを解消しているが、そんな彼らが情熱と慈愛を表現する成熟した演技も見どころだ。 『ポトフ 美食家と料理人』 12 ⽉15 ⽇(⾦) Bunkamura ル・シネマ 渋⾕宮下、シネスイッチ銀座、新宿武蔵野館ほか全国順次公開 BY REIKO KUBO