増える墓じまい 「管理困難」改葬申請相次ぐ、納骨堂の新設機に5倍の自治体も 花を絶やさず熱心に守ってきた鹿児島も「例外ではない」〈かごしま墓事情㊤〉
鹿児島県内で、墓や納骨堂に納めた遺骨を移動する改葬が増えている。厚生労働省によると、県全体の2022年度の改葬許可数は4502件で、20年度の3204件から4割増えた。23年度も西之表市が20年度の5倍、鹿屋市も同年度の1.8倍になるなど増加傾向だ。少子高齢化や核家族化に加え、樹木葬や海洋散骨など弔いの選択肢が増えたことが影響しているとみられる。 【写真】〈関連〉県内の主な自治体の改葬許可件数をグラフで見る
改葬は墓地埋葬法で定められた手続き。遺骨を移動する際は墓地など施設管理者の承諾と、市町村の許可を受ける必要がある。 鹿児島県の地域振興局・支庁の本庁舎がある計7市と、人口10万人を超える霧島市に20~23年度の推移を聞いたところ、西之表が76件で20年度の15件から急増、鹿屋も141件で20年度の76件から倍近い伸びを示す。薩摩川内は5割、鹿児島は3割それぞれ増加。奄美は21年度、前年度の倍に当たる74件となってから高止まりの状態が続く。 複数の担当者は窓口での印象として「墓じまいをする人が増えている」と口をそろえる。高齢で墓参りが難しくなったほか、「管理してきた親族が亡くなった」という県外からの相談もあるという。奄美では、市外からの申請が全体の3~4割を占める。西之表は、市内に納骨堂が新設された頃から申請が急増した。 厚労省の「衛生行政報告例」によると22年度の全国の改葬数は15万1076件と過去最多となった。日本葬送文化学会の会長を務める長江曜子・聖徳大学教授(70)は「団塊世代が高齢化する中、夫婦だけの納骨堂や散骨など多様な選択肢ができ、全国で墓じまいという新たな慣習が生まれた」と指摘する。「花を絶やさず墓を熱心に守ってきた鹿児島も例外ではない。多死社会に単身世帯の増加が続く今後、地域で墓じまいはより重要な課題になる」と話す。
南日本新聞 | 鹿児島