10月末に突然「今年度で閉園」 認可保育園の対応に保護者ら憤り
福岡市博多区の宗教法人聖福寺が運営する「花ぞの保育園」が、経営難を理由に2025年3月末で閉園することが判明した。在園児60人が突然の転園を余儀なくされ、保護者らは不安や憤りを抱えている。 「黒字になるのは無理」。24年10月30日、緊急の保護者会で、園側から今年度いっぱいでの閉園が伝えられた。関係者によると、年500万円以上の赤字が常態化し、先代の役員や現園長が自身の給料で補塡(ほてん)するなどしてきたが、解消に至らなかった。5年ほど前から内部で閉園が検討され、24年4~9月の半期で赤字が800万円に達したことが最終決断につながった。 経営悪化の原因について、園側は人件費と園舎の修繕費の重い負担を挙げた。特に人件費は、保育士の求人を出しても集まらない中、ベテランの保育士への給与や派遣会社を通じた人手の確保にかかる経費などが膨らんだとした。 利用する保護者からは、突然の知らせに「(長年の)赤字を知っていれば、園を選ばなかったかもしれない」と憤る声もあったという。 現在、息子と娘を通わせている会社員の女性は「園を信頼し、卒園した上の子も含めて子どもを通わせてきた。こんな形で慣れ親しんだ園を去らなければいけないのは本当に残念だ」と声を落とす。一方、今年は3月ごろに複数の保育士が退職するとの文書が園内に張り出され、補充もなく新年度が始まるなど気がかりもあったという。息子は今年度で卒園するが、娘が転園対象のため、急きょ仕事を休んで他園の見学に行くなど女性は対応に追われる。 市によると、園からは23年6月ごろから経営悪化について相談があり、人件費の削減や延長保育の導入などを提案したが、助言は受け入れられていなかったという。 市は保護者会で転園の手続きなどを説明。既に転園した1人を除いた59人について、周辺の保育園や幼稚園などに受け入れの協力を要請している。市の担当者は「必ず全員が転園できるよう全力で取り組んでいる」とする。 園は毎日新聞の取材に「大そうな理由はない」として応じていない。 花ぞの保育園は1942年に開園し、今年で82年目。市によると、2018年に南区の認可保育園が急に休園したが、1年後に再開した。【田崎春菜】