【大学野球】小宮山悟監督が「代打5人」の執念タクトで早明戦に先勝 V打のヒーローは「正直、ここで自分かと…」
◆東京六大学野球春季リーグ戦第3週第1日▽早大5―4明大(27日・神宮) 早大、法大が先勝した。早大は同点の9回表1死一、三塁、代打の松江一輝外野手(3年)が右前適時打で勝ち越し。その裏、1死満塁からすでに2勝の1年生右腕・安田虎汰郎が救援し、後続を断って逃げ切った。 【写真】「失敗したら『迷采配』と言われる」と賭けに勝った早大の指揮官 * * * 初球だった。松江はバットを短く持つと、外角低めのチェンジアップを捉えた。折れたバットでライト前へ運び、三塁走者が生還。試合を決めた。一塁上で両手を突き上げ、吠えた。 「何とか内野のアタマを越えてくれという気持ちでした」 小宮山悟監督はこの日、3者連続を含め実に5人を代打起用(うち1人は代打の代打)する執念のタクト。送り出す根拠に「それまでの練習している『サマ』を見ている。1週間かけて、どんな感じかと考えながら」。松江は50メートル走6秒1の俊足と、遠投100メートルの強肩が武器。しかし、「打撃練習の『サマ』を見て、イケるという判断でした」。 小宮山監督が「松江、行くぞ!」と伝えると、本人は「正直、ここで自分かと…」と驚きの方が強かった。指揮官は「キョトンとした顔が忘れられないですね。『代走ですか、オレ!?』というような感じでした」と振り返る。しかし次の瞬間、猛烈な闘争心に変わった。「しっかり投手に対して、打ってやるという気持ちしかなかった」と松江。ほとばしる情熱をバットに込めた。 神奈川の強豪・桐光学園の出身。同校の野呂雅之監督が早大OBであることから「野呂監督が教える姿に憧れを抱いて、大学時代に活躍していた同じ舞台でやりたいと」早大を志望した。評定平均4・9と文武両道を貫き、指定校推薦で合格。ワセダの門をたたいた。「昨年は2度も目の前で優勝する光景を見せられたので」と打倒・明治への思いは強い。 まずは先勝。小宮山監督は言った。「成功したから良かったんで、失敗したら『迷采配』と言われる、そういう起用法。それも含めて、勝負をかけて勝ったということ。明日もこの勢いでいきたい」。観衆1万5000人が沸きに沸いた早明戦。第2ラウンドも、新たなヒーローが出現しそうな予感が漂う。(加藤 弘士)
報知新聞社