<万里一空・彦根総合23センバツ>/5止 競争促し緊張感維持 甲子園勝利目指し守備強化 /滋賀
センバツ選考の重要な資料となる昨秋の近畿大会で初出場ながら8強入りした彦根総合。準々決勝で強豪・大阪桐蔭に力の差を見せ付けられながらも一時はリードを奪うなど光るものを見せた。選手たちは「夢に見続けた甲子園に行けるかもしれない」と期待と不安の中で冬の練習に入った。 練習する選手たちを見ていて宮崎裕也監督(61)が気にかかったのは「大阪桐蔭相手にコールド負けしなかった」と気の緩みが出ていたことだ。昨夏の選手権滋賀大会で初戦敗退したのも春の県大会で4強入りしたことで気持ちが緩んだことが要因だった。このままでは仮にセンバツ出場校に選ばれても甲子園で同じ失敗をするのではないか。 そこで「一度、背番号を白紙にしてチームを作り直そう」と土日は紅白戦を組むようにした。5イニングの試合を1日4試合こなし、チーム内の競争を促すことで選手の緊張感を維持した。また指導者に「やらされる」練習では真の実力は身に付かないと考え、あえて練習に顔を出さず、選手たちが自ら課題を見つけていくことも求めた。 手綱を締めつつ宮崎監督はセンバツ出場をにらみ、チームの方針を「守り勝つ野球」に設定した。大阪桐蔭戦ではエラーも絡んで大量失点につながったことが勝負の分かれ目となった。そのため平日はひたすらノックによる守備練習に時間を割いた。徳村光希選手(2年)は「常にランナーが三塁にいることを想定して緊張感を持って臨んだ」と話す。投手陣は球速を上げるため、軸足だけで階段を上がるなど下半身の強化に取り組んだ。 攻撃面では走塁を大きなテーマにした。小柄な選手が多く、長打では勝負できない。宮崎監督は「まずは自分の価値を認識しよう。体が小さいのなら、単打で足を絡める攻撃をしよう」と走塁の重要性を説き、選手たちはゲームノックやケースバッティングで積極的に次の塁を狙う走塁を心がけた。 更に速球に押されず打ち返す力を付けようと、夕食前や朝など時間を見つけては筋力トレーニングに取り組むようにした。長澤生樹選手(同)は「少しでも体を大きくしようと、間食でおにぎりを食べ、就寝前にはプロテインを飲むようにした」と食事にも気を配った。三橋聖愛(せな)マネジャー(1年)は「選手の太ももが太くなり、背中も大きく見える」とその成果を語る。 春を待ちわびていた選手たちに吉報が届いたのは1月27日。アリーナに集まった選手たちは「本当に選ばれるのだろうか」と緊張しながらその時を待った。松本伸次学園長(71)から出場決定の報告を受けると、全員が抱き合って喜び、「入学して良かった」と入部してから最も感動的な瞬間を味わった。 しかし喜ぶのは1日だけ。一夜明けた翌28日からは再びノックで白球を追いかける選手の姿があった。練習後のミーティングで宮崎監督から「なぜ練習をするのか」と問われた選手たちは考え込み、「甲子園で勝つためです」と口をそろえた。 夢舞台での活躍に向け、ボールに食らい付く「執念」の野球への努力は続く。【飯塚りりん】=おわり(題字は彦根総合書道部)