転職希望先から「裁量労働制で自由な働き方ができる」と言われました。残業が多くならないか心配なのですが、大丈夫かの「見分け方」はあるのでしょうか…?
「業務遂行手段」と「時間配分の決定」が従業員に委ねられていなければならない
裁量労働制は「業務遂行手段」と「時間配分の決定」が従業員に委ねられている必要があります。例えば、次のような場合には裁量労働制は適用できません。なお、今回はSEに該当する「専門業務型」に着目して解説します。 ■数人でプロジェクトを組んでシステム開発を行う場合 チームの管理下で業務遂行や時間配分が行われている者、業務に付随する雑用を行う者、開発を補助するプログラマー等は専門型の対象になりません。 ■時間配分の決定に制約がある場合 会社から始業または終業の時刻のいずれか一方でも指示される業務は、対象業務に該当しません。業務量が過大であったり、期限の設定が不適切な場合には、従業員の時間配分の決定の裁量が事実上失われることになり、労働時間のみなしの効果が生じないとされます。
2024年4月改正で労働者保護の強化が図られている
2024年4月1日以降、裁量労働制について制度の見直しが行われ、対象従業員の保護の強化が図られています。 具体的には、裁量労働制の適用(新規導入・継続ともに)にあたって本人の同意を得ること、同意しなくても不利益な扱いをしないこと、同意の撤回の手続きを定めることが明確化されています。本人の同意を得るにあたっては、会社は次のことを説明する必要があります。 ●対象業務の内容、その他労使協定の内容等、専門型の制度の概要(みなし労働時間を含む) ●同意した場合に適用される賃金・評価制度の内容 ●同意をしなかった場合の配置および処遇
2024年4月改正では専門業務型の追加も行われたが、厳格な要件が課されている
なお、今回の改正では、専門業務型として、銀行または証券会社における合併および買収など考案・助言業務(いわゆるM&Aアドバイザーの業務)も追加されました。これについても、M&Aの「調査または分析」と「考案および助言」の両方の業務を行うものに限る、といった業務の厳格な定めがあります。
転職希望先からしっかり説明を受けること
転職希望先から「当社SEは裁量労働制で自由な働き方ができます」と言われた場合でも、次のようなポイントをしっかり確認してみましょう。 ・実際の業務の内容 例えば、開発プロジェクトチームの担当者としてリーダーの指示のもとで働くなら、業務遂行や時間配分の決定は自分ではできないので、そもそも裁量労働制が適用されません。 ・裁量労働制業務以外の業務が命じられないこと 例えば「開発の空き時間に顧客営業もやってほしい」などといったことです。非対称業務が短時間であっても、裁量労働制は適用されません。 ・みなし労働時間と実労働時間 同様の業務をしている人の実労働時間はどれくらいなのか、それと比べてみなし労働時間の定めは適切かといった点を確認しましょう。 ●裁量労働制に相応しい手当等の処遇が行われるか ●長時間労働防止等の健康・福祉確保措置としてどのようなことが行われているか 説明を受けて、納得できれば同意すればよいでしょう。なお、いったん納得して同意していても、実際に働き始めて、やはりこの働き方では過重労働になる、当初の話と違うといった場合には、同意を撤回することもできます。 また、疑問点などがあれば、企業の担当部署や、労働基準監督署や各都道府県の総合労働相談コーナー等に相談することもできます。転職にあたっては、ご自身で納得のいく働き方を求めていくことをおすすめします。 出典 厚生労働省 専門業務型裁量労働制の解説 厚生労働省 企画業務型裁量労働制の解説 厚生労働省 裁量労働制の導入・継続には新たな手続きが必要です 厚生労働省 令和5年改正労働基準法施行規則等に係る裁量労働制に関するQ&A 厚生労働省 令和5年改正労働基準法施行規則等に係る裁量労働制に関するQ&A(追補版) 執筆者:玉上信明 社会保険労務士、健康経営エキスパートアドバイザー
ファイナンシャルフィールド編集部