首都圏の大学生の起業や移住 福島県内被災12市町村で支援 官民合同チームが橋渡し
福島相双復興推進機構(福島相双復興官民合同チーム)は、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故で避難区域が設定された被災12市町村で地方創生に関心のある首都圏の大学生らが起業したり移住したりするのを後押しする。今年度は手始めに12市町村在住の若手起業家と大学生らの交流事業を9月から展開。併せて東京都内に学生が集える拠点を設け、情報交換や助言などを通して夢の実現を支援する。被災地で課題となっている復興の担い手確保につなげたい考えだ。 事業イメージは【図】の通り。「F12FLYプロジェクト」と名付けた。12市町村ですでに活躍する若手起業家を「キーパーソン」と位置付け、学生の先導者とする。酒の醸造や農業、古民家活用事業などを手がける起業家6人をリストアップした。学生は被災地を訪れ若手起業家と交流することによって将来のキャリア形成を具体的に描ける。若手起業家にとっても学生と一緒に活動すれば新たなアイデアや課題解決の糸口発見につながると合同チームは期待する。
都内に設ける拠点では定期的に学生と若手起業家が情報交換し、マーケティングや地域振興につながるアイデアなどを語り合う。交流サイト(SNS)も活用して継続的にやりとりし、本県での企業経営や暮らしへのイメージを膨らませてもらう。学生が事業に参加するのにかかる費用は一部を合同チームが補助する方針。 12市町村では高齢の帰還者の比率が高く、若い世代の人材育成・確保が必要になっている。福島第1原発の廃炉や処理水の海洋放出、中間貯蔵施設に保管している除染土壌の県外最終処分など中長期にわたる課題も山積している。事業の対象を地方創生や起業に関心が高い学生に特化することで意欲のある人材の確保が可能になると官民合同チームは判断した。 震災と原発事故の発生後、12市町村には首都圏を含めた全国各地の学生がフィールドワークやインターンシップなどで訪れているが、一過性で終わる事例が多く、交流の継続や起業、移住・定住にどう結び付けるかも問われていた。
事業の実施を前に官民合同チームは今月上旬、都内で事業に参加を希望する学生を対象とした説明会を開いた。東京大やお茶の水女子大、早稲田大、明治大などの学生10人ほどが集まった。早稲田大基幹理工学部1年の近藤大誠さん(19)は大熊町の大熊インキュベーションセンターに興味を持っていると明かし、「今回のプロジェクトで若手起業家と交流し、在学中に起業したい」と意欲を示した。