今秋開業を予定する銭湯「渚ゆ」。地域住民や観光客の憩いの場創出を図る＝21日午後、熱海市渚町

　昭和レトロの街並みが残る熱海市渚町に10月中旬、温泉銭湯「渚ゆ」が新規開業する。熱海でまちづくり事業を展開する会社「マチモリ」「マチモリ不動産」が旧飲食店を改装し、市内では35年ぶりとなる新銭湯へと再生させた。時代の流れで街の銭湯が相次ぎ閉鎖する中、地元住民や観光客の憩いの場創出を目指す。 　立地するのは、1950年の熱海大火を免れた古風な商店が軒を連ね、「熱海の原風景」（マチモリ）と称される渚町の一角。2階建ての旧飲食店を吹き抜けの浴場空間に整備した。50度の天然温泉を男女別の湯船に流し、各二つの洗い場を設ける。湯船はそれぞれ3、4人が同時に入れる程度のこぢんまりとしたサイズ。男湯と女湯の仕切り板を外し、温泉イベントや貸切風呂にも活用できる。 　国内有数の温泉地熱海にはかつて少なくとも10軒程度の公衆浴場（銭湯含む）があったという。温泉を引き込む一軒家やマンションが増えた影響で公衆浴場も減少し、2023年11月には老舗の日航亭大湯（同市上宿町）が閉館した。県熱海保健所によると、市内で今も営業を続けるのは山田湯（同市和田町）など3軒程度にとどまる。 　マチモリによると、公衆浴場が隆盛した時代の名残で、熱海には「風呂なし物件」の空き家が数多い。渚ゆの開設により「銭湯付き物件」として移住希望者にアピールすることが可能になり、空き家問題の解消に寄与できる。また、観光客からは温泉地にもかかわらず、「気軽に温泉に入れる公衆浴場が少ない」との声が寄せられていた。 　同社渚ゆ担当の近藤美奈子さんは「温泉地の熱海に暮らす実感を得られる銭湯にしたい」と思いを語る。渚ゆ近くの熱海銀座通りで運営する二拠点生活者向けのゲストハウス「マルヤ」と連動させたサービス展開も模索している。 ■運営携わる「会員」募集　定期巡回で利用お得に 　熱海市の渚ゆは地元会員や観光客の一般利用を広く呼びかけるほか、運営に携わる「湯守（ゆもり）会員」を募集する。 　渚ゆの近隣住民は「一般会員」扱いとし、入浴料金は単発利用で500円、複数回利用できる月決めで7500円に設定する。観光客などの一般利用は大人1000円、子ども500円。湯守会員は最もお得な月決め5000円とする代わりに、湯温確認など施設の定期巡回を担当してもらう。 　営業時間は午後2時から9時まで。火、水曜定休。営業に関する許可申請の関係で、10月中旬を予定する開業時期がずれ込む可能性がある。会員の申し込みや施設情報は渚ゆの公式ウェブサイトへ。