サウンド・アーティスト/シンガー“Moskitoo”、11年ぶりの新作アルバムをリリース
東京生まれで、北海道は札幌育ち、現在は東京を拠点に活動するサウンドアーティスト / シンガーのMoskitoo(モスキート)が、ソロとしては11年ぶり、通算3枚目の新作アルバム『Unspoken Poetry』を「HEADZ」より10月4日(金)にリリース。発売に先駆けて、9月5日(木)にアルバムの2曲目に収録される「Machine Choir(マキナ・クワイア)」の先行配信が開始されています。 過去2作『DRAPE』(2007)、『MITOSIS』(2013)は、故・坂本龍一のコラボレーターとしても有名な電子音楽家のテイラー・デュプリーが主宰する「12k」からのリリースで知られるMoskitoo。近年もMinamoとコラボ作、Federico Madeddu Giuntoliのアルバム『The Text and The Form』への参加、高山康平監督の映画『冬の海の声の記憶』の劇伴音楽の担当など、さまざまなリリースや参加作品はあったものの、Moskitoo単体名義でのフィジカル作品としても11年振り。また、「HEADZ(WEATHER)」からの初リリース作品となります。 国内外の多くの作品に参加してきたMoskitooが、新機軸として、自分自身の作品を制作することを目指した『Unspoken Poetry』の収録曲の多くは、コロナ禍に見舞われた2020年から2023年の間にプライベートな作品として制作。それ以前の数年間は、コラボレーションやヴォーカルでの参加など、外部との関わりから生まれた作品が多かったのですが、それらを経て新たなフェーズや基軸となる、自分のためだけの作品を作るという必然性が生まれたようです。 Moskitooは「制作中、以前取り寄せた、アンティークのポストカードに添えられた手書きのメッセージが目に留まりました。個人的なメッセージが、なぜかマーケットで販売され、海を渡り、時間も超えて、今私の手元で過去のある日の出来事を伝えている。百年前のある人から、ある人へ。相手の人には届いたのだろうか。そこにあるものがその不在を際立たせ、あるいは、不在でありながら姿を象るような感覚。『Unspoken Poetry』という言葉がふと浮かび、誰にも読まれず語られなかった詩片や、片隅の在 / 不在、時間軸の交錯についてが次第にインスピレーション・ソースとなってゆきました」と語り「音質面では、忘れ去られた作品が、作り手のいない未来にサルベージされたかのような、朧げな藁半紙のような質感を意識しています。音響構成では、電子楽器やギター、これまでライヴ演奏で取り入れてきた鉄琴やオルゴール、石や木、非楽器などのサンプリングに加え、動画に意図せずに残された音やテスト録音した声、偶然のエラーの反復など、無作為的な音や過去の音源などを織り交ぜています。全体を通して過去と現在の時間 / 記録を重ね合わせ、解体と構築を繰り返し、音の実体や輪郭を変容させながら制作しました」とアルバムについて説明しています。 ミックスは前作『MITOSIS』や2020年のMinamoとの共作アルバム『Superstition』に続き、FilFla、FourColor、Vegpher名義の作品でもMoskitooとの共演を重ねて来た杉本佳一が担当し、マスタリングは過去2作のソロ・アルバム同様、テイラー・デュプリーが担当しています。ミックスでは、本作で追求する音響的なヴィジョンを共有しながら、各要素を緻密にバランス調整。杉本佳一本人によると特にアンビエンスの質感にフォーカスしているとのこと。マスタリングでは、一音一音の音をより立体的に際立たせながら、全体の音像を柔らかくオーガニックで心地よい、テイラー・デュプリーらしい中音域の響きへ昇華しており、テイラー本人によると中音域の精密な処理を施し、タイトかつ一音一音が際立つクリアでオープンなサウンドの実現を目指したとのことです。 また、アートワーク&デザインはMoskitoo本人が担当。アルバムの内容を具現化したようなクラフトマンシップあふれる仕上がりとなっています。 [コメント] 声は音であり、ことばは響きである。 意味へと収束するのではなく、世界に拡がり散らばっていく、声、音、ことば、響き。 メロディと肌理。 微かで幽かな、儚くも優美な、音楽。 モスキート。 ――佐々木敦(HEADZ)