小川絵梨子芸術監督が力を込めて語った、新国立劇場2024/2025シーズン演劇ラインアップ
新国立劇場2024/2025シーズン演劇のラインアップが発表された。2月28日に実施された説明会には新国立劇場演劇芸術監督の小川絵梨子が登壇し、上演作品や新たな取り組みについて説明した。ロシアのウクライナ侵攻が始まった頃にプランを立てた作品が多いと話す小川。「失ったり、不安になったり、傷ついたり、恐怖を感じたり、その中でもなんとか生きて未来への希望を見出したいと葛藤する人々を丁寧に描く物語が、多く集まったと思います」と述べたうえで、各作品の説明に移った。 【全ての画像】新国立劇場2024/2025シーズンラインアップ各組写真 ■『ピローマン』 (2024年10月8日~27日) 作:マーティン・マクドナー 翻訳・演出:小川絵梨子 出演:成河、亀田佳明、斉藤直樹、松田慎也、大滝寛、那須佐代子 イギリスの劇作家、映画監督であるマーティン・マクドナーの人気作が登場。日本でも人気の高い作品だ。翻訳・演出は小川絵梨子が手がける。「10年ほど前、新国立劇場ではないところで一度演出していますが、キャストやコンセプトなどを一新した形でのお届けになると思います。ある架空の国で、非常に理不尽な状況などがある中で、ある作家を中心に描かれる物語です。理不尽な世の中で、物語を生み出す作り手の意義、そして責任、物語が紡ぎ出していくべき希望について問う作品になればと考えています」(小川)。 ■『テーバイ』 (2024年11月7日~24日、新作) 原作:ソポクレス『オイディプス王』『コロノスのオイディプス』『アンティゴネ』 翻訳:高津春繁(『オイディプス王』『コロノスのオイディプス』)、呉 茂一(『アンティゴネ』)による 構成・上演台本・演出:船岩祐太 出演:植本純米、加藤理恵、今井朋彦、久保酎吉、池田有希子、木戸邑弥 ほか 新国立劇場初登場となる船岩祐太が構成、上演台本、演出を担う。ソポクレスの『オイディプス王』、『コロノスのオイディプス』、『アンティゴネ』を下敷きとした物語だ。「私の任期に始まり、続けている“こつこつプロジェクト”から上がってきた作品です。既に1年以上の“こつこつ”を続け、さらに稽古をしての上演となります。オイディプスの運命や、クレオンが権力者になっていくまでの、そこでの葛藤と、人間のもつ不安、迷い、ある種の自己欺瞞などによる苦難、困難を体験しながら、テーバイの土地で生きていこうとする人々、為政者を描く物語です」(小川)。 ■『白衛軍 The White Guard』 (2024年12月3日~22日、日本初演) 作:ミハイル・ブルガーコフ 英語台本:アンドリュー・アプトン 翻訳:小田島創志 演出:上村聡史 出演:村井良大、前田亜季、上山竜治、大場泰正、大鷹明良 ほか ブルガーコフの小説を、オーストラリアの作家アンドリュー・アプトンが戯曲化。「ロシア革命直後、ソビエト政権が誕生したときのキーウにいたある一家の物語を描いています。戦争、侵略という、あらゆる正義の名のもとに行われている破壊活動は、人々の人生、家族の生き方、個人の思い、そしてもちろん命というものを潰していってしまう。まさしくいまに繋がっている物語かと思います」(小川)。演出は上村聡史が担当する。 ■こつこつプロジェクト Studio公演『夜の道づれ』 (2025年4月) 作:三好十郎 演出:柳沼昭徳 出演:石橋徹郎、金子岳憲、林田航平、峰一作、滝沢花野 三好十郎作品を、新国立劇場初登場の柳沼昭徳が演出する。「元々ラジオドラマとして書かれ、三好さんの作品の中でもあまり上演されていない作品だと思います。主人公のふたりはまさしくこの、(新国立劇場が面している)甲州街道沿いをずっと歩いている。戦後の日本で、夜中の甲州街道をふたりで歩きながら、日本がそれまでどのように歩んできたのか、そしてどのような道を進む選択して歩んでいくべきかというのを問いかける作品です」(小川)。『テーバイ』と同じく第2期こつこつプロジェクトからの作品で、通常より小規模かつ簡素に上演する試演という位置付けとなる。これまでクローズドで展開してきた“こつこつプロジェクト”だが、小川は「料金をなるべく低価格にして、たくさんのお客さまに観ていただき、お客さまとのトークセッションなどを実施し、さらに作品の強度を上げる、“こつこつプロジェクト”の延長の形という新しい試みを始めます」と意欲的だ。