青森県内の市民活用率、1割未満 AEDもっと使って 「救急の日」に講習会
自動体外式除細動器(AED)を一般市民が使えるようになって、今年で20年がたった。心停止した傷病者に対しAEDを用いて電気ショックを行えば救命率は高まるが、市民が活用した事例はいまだ少ない。9月9日の「救急の日」に青森市内で開かれた救命講習会で、講師を務めた青森消防本部の田中康喜消防司令補は「AEDは難しいものではない。自分の行動で、目の前の命が救えることを知ってほしい」と語った。 2004年、それまで医療従事者に限られていたAEDの使用が一般市民に解禁された。救急車の到着までの間にAEDによる電気ショックを行うと、心停止の傷病者の生存率が大きく上がる。 総務省消防庁の22年の統計によると、胸骨圧迫など心肺蘇生を実施しなかった場合の1カ月後の生存率は6.6%。実施した場合は12.8%で、さらにAEDを使った場合は50.3%まで上昇した。しかし同年、倒れる瞬間を市民に目撃された心停止傷病者のうち、約半数は心肺蘇生を受けていなかった。AEDによる処置が行われたのはわずか4.3%しかなかった。 青森県の状況を見ると、22年に一般市民による心肺蘇生が行われたのは186件で、そのうちAEDの使用は11件だった。ここ5年間のAED使用はいずれも10件台にとどまっている。 通報から現場到着までの所要時間は、23年4月時点で全国平均約10.3分。「救命率は心肺停止から1分ごとに約10%ずつ下がってしまう。到着までの応急処置が非常に大事になる」と田中消防司令補は語る。 青森消防本部は同日、青森タクシー協会の職員らを対象に救命講習会を行った。約20人が参加し、心肺蘇生法やAEDの使い方などを学んだ。幸福タクシーに勤める福士秀樹さん(69)は、「何度か講習を受けていても、いざ使う時は不安。定期的に講習会に参加し、手順を確認したい」と話した。田中司令補は「救急隊だけではなく、皆さんの手当てで命がつながれる。傷病者が危険な場面に立ち会った時は、AEDを使うなど積極的に救命処置に当たってほしい」と呼びかけた。