宮本茉由、キーパーソンを担える俳優に 『占拠』シリーズから変化した“怪しさ”のギャップ
毎話、注目の若手俳優がゲストとして登場する『GO HOME~警視庁身元不明人相談室~』(日本テレビ系)。第6話では、トー横キッズの少女・ハルピを、元『Popteen』モデルの莉子が見事に演じ切った。第7話では、物語の鍵を握るトリマー・浜野真由美役を、数々の作品でストーリーを揺れ動かしてきた宮本茉由が演じる。 【写真】『新空港占拠』で裏切りを見せた“蛇”の宮本茉由 宮本は2015年から芸能活動を開始し、2022年1月までは、『CanCam』の専属モデルとして活動。2018年10月期ドラマ『リーガルV~元弁護士・小鳥遊翔子~』(テレビ朝日系)で俳優デビューを果たした。『リーガルV』では、デビュー作ながら主人公・小鳥遊翔子と敵対する弁護士事務所代表の美人秘書・中沢淳美役を演じ、時に暗躍するなど、セリフは少ないながらその美しくミステリアスな雰囲気で存在感を発揮した。 俳優デビュー当時から、端正な顔立ちの裏に何かあると思わせる芝居を得意とする宮本。その真骨頂となるのが、『大病院占拠』(日本テレビ系)と『新空港占拠』(日本テレビ系)で演じた駿河紗季役だろう。『大病院占拠』は、武装集団である百鬼夜行が日本が誇る大病院を占拠するサスペンスドラマ。駿河は感情を表に出さずに淡々と仕事をこなしていく警察の情報分析官として活躍しながら、警察内部の裏切り者ではないかと疑われる役柄であった。何度も疑いの目を向けられながらも最後まで警察側の人間として役目を終えたが、ミスリード要員としての宮本の芝居に、最後まで翻弄されたという人も多いだろう。 『大病院占拠』は、駿河が怪しいメールを表示した後にニヤリと微笑むシーンで幕を閉じる。放送当時は真実が捉えにくいオチであったが、このシーンは『新空港占拠』で無事回収されることとなった。『新空港占拠』は、空港を選挙する獣の面を被った武装集団と警察の戦いを描いた物語。駿河は彼氏と結婚して情報分析官を退職したとされていたが、第1話の最後に明かされた一人目の武装集団メンバーの正体が駿河だったのだ。結婚相手との写真は、駿河による合成と明かされ、『大病院占拠』の頃から敵のスパイとして警察に潜入していたことが明らかになった。『大病院選挙』を見ていた視聴者は「やっぱり!」と膝を叩きたくなった設定で、『大病院占拠』と『新空港占拠』の1年の時を経た伏線を繋ぐ人物として活躍した。 4月期ドラマ『6秒間の軌跡~花火師・望月星太郎の2番目の憂鬱~』(テレビ朝日系)では、主人公・星太郎(高橋一生)に弟子入り志願とプロポーズをした謎の女性・野口ふみかを好演。卒倒して白目を剥くなどコメディエンヌとしての才能も発揮した。丁々発止の会話劇が魅力の本作で、2作目から追加された新たな主要人物としてストーリーを掻き回していく大役を務めていた。 宮本が持つ謎めいた雰囲気は、人物の多面性やギャップを表現するのに最適だ。物語のジャンルがサスペンスであったとしても、コメディであったとしても、そのギャップがストーリーに奥行きを出し、キーパーソンとして活躍できる実力を持っている。ミステリー要素もあるヒューマンドラマ『GO HOME』でも、宮本が表現する深い人間性や怪しさを漂わせる存在感は大きな鍵となるだろう。 思えば、宮本と同年代の『CanCam』出身俳優である山本美月や堀田茜も、正統派ヒロインでありながら、どこか癖のある役を演じることが多くなってきた。宮本も、作品中の謎を抱えるキーパーソンとして、彼女らしいヒロイン像で今後も活躍していくことだろう。
古澤椋子