製造早期段階での欠陥の検出: Smartexが描くサプライチェーンの合理化
繊維の製造工程にはいくつかの欠陥原因があるとされているが、その大半は編みたての段階で発生する。この欠陥は手作業が原因となることが多く、また製造の早い段階で検出することは困難であったという。そのような問題を解決すべく設立されたポルトガル発のSmartexは、製造中に欠陥を検出するために先端のAIと機械学習アルゴリズムを利用したソリューションを提供する。
Smartexの起源とその軌跡
Smartexの創業者のひとりである、ギルベルト・ルレイロ(Gilberto Loureiro)は、Smartexを立ち上げる前から、繊維の欠陥とそのコストに対する問題意識があったという。ポルトガル出身のギルベルトは、テキスタイル工場で働く親を持ち、高校生の夏休みをテキスタイルの生地の検査員として過ごしたという。ギルベルトは家族で初めて大学に進学したといい、そこでのちの共同創業者となるアントニオ・ローシャ(Antonio Rocha)とパウロ・リベイロ(Paulo Ribeiro )に出会い、ともにSmartexの基礎を築いた。 転機が訪れたのは、2015年にギルベルトとアントニオの共通の友人であるカルロス・レイ・サントス(Carlos Lei Santos)が、シリコンバレーのスタートアップ「UpLink」を立ち上げたことだという。友人の成功に触発された彼らは、自身もスタートアップを立ち上げたいと考え、繊維産業が理想的なターゲットであると認識した。なぜなら繊維業界では高度な機械に大きく依存していたが、その工程では手作業におけるエラーが発生しやすく、これが欠陥の原因となっていたからだ。 繊維検査員の経験から、ギルベルトは不良品を減らすことが業界にとって大きな利益になることを理解しており、特に丸編み機に欠陥を見つけるためのシステムを取り付け、早い段階で検査員の目に留まるようにし、調整のために自動的に生産を停止できれば、工場はエネルギー、水、染料、および糸の無駄を減らすことができると考えた。 そうしてギルベルト、アントニオ、パウロの3人の共同創業者は、繊維産業、電子工学、ソフトウェアとそれぞれ異なる専門分野を持ち、大学院で学びながら夜や週末にSmartexの構想に取り組んだ。 そんな矢先、2018年初頭に彼らは突破口を発見したという。ギルベルトの友人が所有するテキスタイル工場で、チームは既存の丸編み機を高解像度カメラとライトを備えた丸編み機へと改造した。撮影された生地の画像は、欠陥に関連する視覚的な手がかりを認識するようにトレーニングされた機械学習アルゴリズムに送信され、画像上にライクラダッシュと呼ばれる欠陥が見つかると、編み機を自動的に停止させるという仕組みだ。なお、ライクラダッシュは、生地の表面に細い線や筋として現れ、人間の目にはほとんど見えない欠陥だという。 システムの成功を受け、Smartexの技術を拡大すべく、彼らはHAXアクセラレータープログラムから2018年11月に支援を受けてSmartexを設立、深センでのプログラムに参加した。