WBC優勝監督の栗山英樹氏が指導者の心得「“こうしろ、ああしろ”ではなく、それを自分が実践。指導者はその背中を見せるということは結構大事」
野球の「2023 WORLD BASEBALL CLASSIC」の優勝監督で現在、北海道日本ハムファイターズのCBOを務める栗山英樹氏が著書「栗山英樹の思考」と「監督の財産」の出版を記念したトークイベントとサイン会を1月15日、都内の書店で開催した。 トークイベントでは冒頭、CBOについて「僕もよく分からないです(笑)。あんまり何にもしてないですよね。もとい。すごい仕事してます(笑)」とジョークを飛ばすなど、つかみはOK。高いトークスキルを見せたと思いきや「慣れてないので」とステージ中央に用意されたイスから立ち上がると前半は舞台を降りて立ったままトークを展開した。 「栗山英樹の思考」は栗山氏の語録、思考、そして読者家である栗山氏の愛読書などを紹介したもの。その中の語録をもとに監督業を振り返り、また自身が現役の時代と指導者になった時代の言葉の伝わり方などを比較し、監督としての選手との接し方などを明かした。 「監督の財産」は2012年にファイターズの監督に就任してから在任中に出版した5冊の書籍に加え、10万字の新原稿も収録したもの。監督の1年目の自身の取り組みを活字として残したものもあるのだが、この本について栗山氏は「自分が困ったものを次の世代にちゃんと残す。タイトルは『監督の財産』となっているが僕の中では“栗山リポート”のつもり」などと語ったうえで、自身が読み返した時に「今も発見がある。改めてその時のことを残していた良かったと思う。違うなと思ったことが本に書いてあったことが正しかったり」とも語った。
その後もファイターズの監督とナショナルチームの監督の共通点と相違点というテーマでは「目的地は一緒というのは共通点。勝ち切って優勝して、選手たちの成長を促す、立場を上げる、給料を上げる。応援してくれるファンの皆さんを喜んでもらう。それは一緒だが、チームの監督は仮に勝てなくても人を育てるということが重要な時もある。結果は自分が辞めた後に出ることもある。ジャパンの場合は勝つことが正義。勝つためだけに物事を考えなければいけないというのが違うところ。ジャパンには裏テーマというものが実はいくつかある。それは表には出さないが。勝つことのためだけに判断することが相違点だと思う」などと興味深い話も飛び出した。 昨年は2位と躍進したファイターズについては「今年は勝ち切る年。いいところまで行くのも大事だが、勝ち切ったことによってチームにまた新しい文化が生まれると思っているので、勝たなければいけないシーズンなんだなと思っている」などとさらなる飛躍を期待。「新しい血が入ってくるイメージがある」と若い選手たちの活躍を予言した。 また大谷翔平ら日本人メジャーリーガーについては「野茂選手が道を切り開いてくれて、それに続く選手たちがベースを作ってきた30年。やっとここで日本の野球もすごいんですよというか、日本人もここまでやれるんですよ、ということを証明するシーズン」などとすでにメジャーで確固たる地位を築いている選手たちはもちろん、現在、メジャー球団と交渉中の佐々木朗希、小笠原慎之介らにも期待した。