『ブギウギ』マネージャーの五木は本当に“腕利き”なのか? 村上新悟の声の表現に期待
茨田りつ子(菊地凛子)のコンサートに感銘を受け、自分の楽団を作ることを決めたスズ子(趣里)。放送中の朝ドラ『ブギウギ』(NHK総合)は、また新たな局面を迎えているところだ。 【写真】ピアニスト・二村を演じるえなりかずき 物語に新展開が訪れる際に気になるのが、やはり新キャラクターたちの存在だろう。そのうちのひとりとして登場するのが、村上新悟が演じる五木ひろき。これまたクセのありそうなキャラクターである。 社会情勢の大きな変化により、「梅丸楽劇団(UGD)」は解散せざるを得なくなった。歌手としての職を失い、生きがいを失ったスズ子は失意に沈んでいたが、りつ子のパフォーマンスに刺激を受けて「福来スズ子とその楽団」を結成。かつて「UGD」でともに活動していたトランペット奏者・一井(陰山泰)を筆頭に、ベテランギタリスト・三谷(国木田かっぱ)、若手ピアニスト・二村(えなりかずき)、ドラマー・四条(伊藤えん魔)らが仲間に。これを担当するマネージャーが五木ひろきである。 この五木とは、辛島部長から紹介された、自称“腕利きマネージャー”。「自称」というところが非常に気にかかる……。ドラマの展開が盛り上がるようなエピソードのひとつやふたつ、おそらく彼が持ち込んでくれるのではないだろうか。 第7弾の新キャスト発表時に制作統括の福岡利武は「マネジャーの五木役は村上新悟さん。大河ドラマは常連ですが、朝ドラは初出演。出来る男なのか、そうでないのか? 良いやつなのか、どうなのか? どことなく醸し出される怪しさをうまく表現していただいています」と、五木役に村上を起用した理由を明かしている。 この発言から分かるのは五木という人物が、私たちが見守り応援してきたスズ子を託してよい存在なのか怪しいということ。ともかく、スズ子や私たち視聴者を翻弄することを村上の演技に期待しているらしい。 村上といえば、あの仲代達矢が主宰する「無名塾」でキャリアをスタートさせた俳優だ。演劇領域から活動をはじめる者は数多く存在するが、ひとくちに「演劇」といっても、それがどのカンパニーなのかによって大きく違う。 たとえば、『ブギウギ』の序盤戦で健闘した橋本じゅんは「劇団☆新感線」の所属俳優であり、この劇団でキャリアをスタートさせた。「劇団☆新感線」は日本が誇る超ド派手なエンターテインメント演劇を展開する劇団だが、いっぽうの「無名塾」は若手俳優のための“塾”である。俳優としての基礎的な技術だけでなく、礼儀作法まで身につける修行の場だ。もちろん、どんなカンパニーもひとりの人間が舞台に立てるだけの基礎トレーニングはするものだが、「無名塾」は異色なのである。 村上の朝ドラへの出演はこれがはじめてなものの、大河ドラマには『風林火山』(2007年)、『八重の桜』(2013年)、『軍師官兵衛』(2014年)、『花燃ゆ』(2015年)、『真田丸』(2016年)、『西郷どん』(2018年)に出演し、それぞれの作品を支えてきた。とくに『真田丸』で演じた直江兼続の姿が強く印象に残っているかたが多いのではないだろうか。彼の声の表現力の豊かさには大きな注目が集まったものだ。その質感で魅せるだけでなくシーンごとに自在に操り、対面する俳優や視聴者にもっとも響くものを出力する。声の扱いに関してたしかに“腕利き”なのだ。『ブギウギ』でもその声の表現で魅せてくれそうである。 キャスト発表時の公式コメントで村上は「趣里さんを筆頭にチーム一丸となって奏でる独創的なハーモニー」という言葉を述べている。“村上新悟=五木ひろき”の存在が、非常にユニークな役割を果たすのではないだろうか。
折田侑駿