日本の相対的貧困率は先進国で最悪の15.4%「一億総中流社会」が崩壊し「身分社会」に逆戻りした“近未来の日本”で確実に起こること
パラサイト難婚社会 #3
1970年代に生まれた「一億総中流社会」という言葉。大半の国民が中流の暮らしができているという概念だが、いまやその認識は崩れ去り、相対的貧困率は先進国の中で最悪だという。 【写真】まだまだ学歴社会である日本
こうした社会の歪みが未婚社会として顕れていると指摘する書籍『パラサイト難婚社会』より一部抜粋し、日本が身分社会に変容していくさまを解説する。
未婚社会は「中流脱落恐怖」の化身
日本の結婚生活は、「不幸の共同体」に陥りかけているのではないでしょうか。高度経済成長期には、「今は不幸でも、これから幸せになれる」と多くの人が夢を見られたのに対し、今の日本は、「現在、不幸」なら「今後もずっと不幸」と思うしかない社会状況であるように見えます。 人生のステップアップを望めない非正規雇用者がこれだけ多い日本で、しかし現在いちおうの安定を享受している中流層も、不安から逃れることはできません。わずかに気を抜けばすぐさま現状のステイタスから下流に滑り落ちてしまう恐怖に、特に現役子育て世代はからめとられています。 「自分だけなら、どうにか無事に人生を送れそうだが、我が子は自分と同じランクの人生を歩めるだろうか?」 その不安が、昨今の塾歴社会に表れています。幼少期から学習塾に通い、小学校高学年ともなれば、弁当持参で夜学を日常とする姿を年配者は理解できません。 「子どもは子どもらしく、外遊びをしていればいいのに……」 内心はそんな思いの親もいるはずですが、それでも100万円近くかかる塾代・習い事代を捻出しようと必死で働くのは、そうでもしないと「我が子が脱落してしまう」という危機意識ゆえです。中学受験の教育費で破産するという、「中受破産」という言葉も生まれているほどです。 では、何から「脱落」するのでしょう。 「中流層からの脱落」です。 拙著『希望格差社会│「負け組」の絶望感が日本を引き裂く』(ちくま文庫)で、日本社会が上流と下流に二極化している現実に警鐘を鳴らしたのは2004年のことでしたが、あれから20年が経ち、現状は改善されるどころかますます悪化しています。