欧州から来た男マシュー・パボンが見せた起死回生の18番3rdショット【佐藤信人のPGAツアーアフタートーク】
米カリフォルニア州のトーリーパインズGCで開催された「ファーマーズインシュランスオープン」。3日目が終わって3打差の中に8人がひしめく大混戦になったが、1打差の2位タイでスタートしたフランスのマシュー・パボンが13アンダーでツアー初優勝を飾った。フランス勢がPGAツアーを制したのは約117年ぶりの快挙。最終日18番でもドラマがあった同大会の模様を、ゴルフネットワークで解説を務めた佐藤信人プロに振り返ってもらうとともに、今週行われる「AT&Tペブルビーチプロアマ」の展望も語っていただきました。 【動画】フランスのマシュー・パボンがツアー初優勝で117年ぶりの快挙!松山英樹は3連続バーディ&イーグル締めで13位タイ【ファーマーズインシュランスオープン4日目】
よぎった「ヴァン・デ・ベルデの悲劇」を振り払ったパボン
PGAツアーは開幕してから劇的な展開の試合が続いていますが、今週も非常に面白い試合になりました。まずは優勝したマシュー・パボン(フランス)について。23年「アクシオナ スペインオープン by マドリード」で初優勝を飾ったことや、昔全米オープン出た時に上位に来た時の記憶があったり、お父さんがサッカー選手だったりというのは何となく知っていましたが、どういうゴルフをするかということは全く知りませんでした。 ということで今回、初めて見たのですが、球筋が全てフェード。あれが逆にカッコいいなあと思いましたね。また、お母さんがフランスでジュニアのゴルフアカデミーを運営するなど、ゴルフの底辺を広げる活動をしていて、そのお母さんの影響でゴルフ始めたということも今回初めて知りました。 それにしても、欧州ツアーのトップ10がPGAツアーに出場できるという制度が誕生して1年目で、欧州から来た選手がいきなり優勝するというのもすごいこと。「ファーマーズ」が土曜日に最終日を迎えるという1日早いスケジュールだったこともあり、DPワールドツアーの最終日を迎えようとしていた欧州の選手たちも、かなりテンションが上がったんじゃないでしょうか。 試合自体も、ドラマを生むトーリーパインズらしく、最後までハラハラドキドキの展開でした。パボンが18番パー5でティーショットをバンカーのアゴに打ち込んで、何とか脱出した球が深いラフにつかまったときは、18番でトリプルボギーを叩いて結果的に優勝を逃した2012年の同大会のカイル・スタンリーや、1999年の全英オープン18番でトリプルボギーを叩いたフランス人選手、ジャン・ヴァン・デ・ベルデのことが頭をよぎりましたが、3打目をあの深いラフからグリーンに乗せてくるとは。 彼のチョイスとしては、グリーンの奥にこぼれてもいいから手前の池だけは避けようということだったと思いますが、まさかそのショットがピンから2mのところに付くとは思いませんでした。確かにいいショットではありましたが、見えない力が働いた気がしてなりません。さらにそのあとのウィニングバーディパットも、実に見事でした。 日本人選手は松山英樹選手、久常涼選手、蟬川泰果選手が出場しましたが、3人とも精一杯のプレーをしたと思います。松山選手に関しては、2日目の8番でホールインワンが出たときに、「これで流れをつかむかも」と思ったのですが、そう簡単には行きませんでした。それでもインスタートだった最終日は、6番から3連続バーディーを奪い、9番はイーグルで締め。順位も13位まで上げました。今後につながる最終日だったと思います。 久常涼選手も初のPGAツアー参戦ながら頑張っていたと思います。「ファーマーズ」で上位に入って、「AT&Tペブルビーチ」の出場権を獲得するという目標は達成できませんでしたが、ここまでの疲労もあると思うので、ここはしっかり休んで、次に備えてもらいたいと思います。