「数値で物事を把握しないものは衰退する」 仕事ができる人が知る「数字の使い方」真似したい3選 元ソフトバンクのマーケターが孫正義から学んだこと
もちろん、ローンチ前には、想定される顧客に対する綿密な調査を実施。顧客は、生徒とコーチの両方です。まず生徒側のニーズは、アンケートを実施して吸い上げることができました。一方、難航したのがコーチ側のニーズです。 そもそもプロの指導者が少ないこともあって、なかなかニーズが読めませんでした。それで数少ないコーチの知り合いに相談したところ、その人が周囲のコーチ陣に聞いてくれることになりました。そこで得られた意見は、「自分の周りはみんな使うって言っていたよ」というものでした。
本来ならば、ここで立ち止まるべきだったのでしょう。しかし、その知り合いがとても信頼の置ける人だったこと。そして仕事では厳しい人であったこともあり、その人たちから聞き取った話をもとに、事業を組み立てることにしました。 ■失敗から得た教訓は「数字の裏付け」の重要性 さて、実際に起業をしてどうだったかというと、なんと蓋を開けてみれば、実際のニーズは想定の10分の1以下という惨憺たるものでした。 自分の練習の様子を見てほしい利用者はたくさんいるのに、見てくれるコーチがほとんどいない。
結局、事業として成り立たず、会社はたたむしかありませんでした。 どんなに緻密に考えていても、綿密な準備を進めていても、たった1つ、適当な数字を許容しただけで、屋台骨が傾いてしまう。 「ネットで見た」とか「過去の経験ではこうだった」とか「自分の周りの人はこう言っている」などは、裏付けとしては意味をなさず、あくまで参考値でしかありません。 そうしたものを鵜呑みにせず、確実な数字の裏付けをとっていくことが、何より重要なことなのです。
池田 昌人 :ソフトバンクCSR本部長兼ESG推進室長、子ども未来支援財団専務理事