感謝や笑顔とともに――ジーコのチャリティーマッチでスターたちが共演
ブラジルサッカーの歴史と共に
2004年の第1回から振り返ると、時代やブラジルサッカーの歴史が見えてくる。2005年には現役時代にメディアからライバル同士として扱われてきたディエゴ・マラドーナと、2009年には長年に渡って犬猿の仲だったロマーリオとも一緒にプレーした。2011年には引退したばかりのロナウドと新星ネイマールが共演。2016年は航空機墜落の犠牲となったシャペコエンセへのサポートも目的とした。 2019年はフラメンゴのコパ・リベルタドーレスとブラジル全国選手権優勝を祝って、その優勝メンバーたちと、ビニシウス・ジュニオールやルーカス・パケター、GKジュリオ・セーザルといった元所属選手たちが一堂に会し、サポーターを歓喜させた。2022年はブラジルの至宝エンドリッキが大先輩たちに混じって縦横無尽に駆け回った。そして今回は、1年前に亡くなった2人の偉大な人物、ペレとホベルト・ジナミッチを称えるセレモニーが行われた。 1人の元選手が、これほど長年、そしてこれほどの規模でチャリティーマッチを開催し続けている例は他にない。それが、ジーコの呼びかけで集まってくる選手たちの、誇りと幸せの理由でもある。
「ジーコは僕らの王様だ」
試合後にも、サポーターにとっては楽しい時間が待っている。居残った観客がスタンドの前列に集まると、ジーコは足を引きずりながらでも、笑顔でピッチを一周して、一人ひとりの写真やサインに応じるのだ。 初めてこのイベントを取材したジャーナリストたちはその姿に感嘆し、毎年の取材の常連たちは「試合後のジーコのコメントが欲しければ、軽く1時間は待つよ。2時間待った年もある」と、そのジーコの忍耐強いファンサービスを、なぜか自慢そうに話すのも恒例だ。 今回も1時間半ほど待って、ピッチから引き上げてきた笑顔のジーコに、この日の成功について聞いた。 「このイベントの成功に、それぞれの形で協力してくれたみんなに感謝ばかりだよ。スタジアムに5万1000人以上が集まって、スペクタクルを楽しんでくれた。多くの素晴らしい人たちが、ブラジルサッカーに喜びをもたらしてくれるんだ。現役選手も、引退した選手も、サッカーに関わる仕事をしている人たちも。この試合を紹介するために、時間やスペースを与えてくれるメディアも、中継してくれるテレビ局も。パートナーシップを組んでくれるスポンサー企業の数々も」 「だから、僕らはより良い試合を見せようと頑張るんだ。ここに参加してくれる選手たちの幸せそうな笑顔には、時には感動までするよ。ロッカールームで再会した時の、あの瞬間に幸せを感じる。年末に色々な犠牲を払ってでも、ここへ来てくれたサポーターに感謝ばかりだ。ここにいるあなたたち報道陣も、ずっと待っていてくれるしね。そうやって、僕らはここでのすべてを実現しているんだ。それはうれしいことだよ」 試合ではジーコも前半にPKで1点、後半は流れの中でもう1点を決め、観客を沸かせた。スタンドにはサポーターが持ち込んだジーコの似顔絵の旗が翻り、長年歌い継がれたチャント「ジーコは僕らの王様だ」が響き渡った。 感謝と喜び、幸せにあふれた試合後のジーコのインタビューは「僕の身体もおかげさまで、ここでのすべてに耐え切ってくれた」と笑いながら語る言葉で締め括られた。このチャリティーマッチの収益は毎年、経営の苦しい子どもたちのための施設や小児病院などに分配される。