逆転の報徳を支えた 「はきそう」になりながら鍛えた守備 センバツ
◇センバツ高校野球1回戦(22日、甲子園) ◇○報徳学園(兵庫)3―2愛工大名電(愛知)● 【攻撃もキラリ】砂ぼこりを上げ、二盗に成功 延長タイブレークの末に逆転サヨナラ勝ちした前回準優勝の報徳学園。もちろん、ヒーローはサヨナラ打の4番打者。だが、数々の堅守がなければ、「逆転の報徳」はなしえなかった。 観客が沸いたのが、三塁手・西村大和の九回のプレーだ。1―1の2死三塁で、愛工大名電の1番・山口泰知の強烈なゴロが三塁線を襲った。西村は軽やかなステップでゴロの正面に入った。体ごと受け止める形で捕球し、素早く一塁手にストライク送球。抜ければ勝ち越されたピンチを脱し、帽子を落とすほど跳び上がって喜んだ。 西村は「相手打者はこれまでの打席から引っ張り傾向があると、遊撃手、左翼手の間で声をかけ合っていた」。周到に準備し、強烈な打球にも冷静に対処できた。 冬の練習中、報徳学園では伝統の「特守」と呼ばれる守備練習がある。一人約20分、二塁、三塁ベースのぎりぎりに転がされた球を捕球していく。練習着は泥だらけになり、その直後は「はきそうになってご飯も食べられない」(西村)ほど。週5日行われる部員全員が恐れるメニューだ。西村は「練習に行って、これがあると『うわっ』って感じ。めっちゃしんどいので正直、嫌……」と吐露しつつも「でも、このおかげで球際に強くなれた」と強調する。 他にも、三回2死一塁の守りでは、右前打を処理した右翼手の安井康起が矢のような送球を見せ、西村もワンバウンドを難なく捕球し、三塁を狙った相手走者を刺した。八回2死二塁で高く弾んだゴロを処理した遊撃手・橋本友樹のグラブさばき、一塁手・斎藤佑征のワンバウンドの捕球はいずれも高い技術だった。 愛工大名電の山口は「これまでこんな守備は見たことないし、甲子園でも見たことがない」と脱帽した。2番手で好投した報徳学園・間木歩は「本当に投げやすい環境だった。でも、もっとできるんじゃないか」。バックの守備力が右腕二枚看板のチームをより強力にしている。 実は西村は1年前、センバツ3回戦の東邦(愛知)戦のタイブレークで、サヨナラ打を放っていた。「頑張ってきた守備でチームが勝てたのもうれしい」と言いつつ、「自分で打って勝つのは別格」。高校生らしく本音も漏れたが、終始満足そうな笑顔だった。【大東祐紀】