阪神・藤川球児の先発転向は限界なのか?
元阪神、日本代表でチーフスコアラーを務めた三宅博さん(現在、岡山商科大特別コーチ)は、抑えから先発転向が難しい理由をこう語る。 「リリーフは全試合ベンチに入り、毎日、どこかで肩で作るので、疲労が蓄積されていく。加えて最もプレッシャーのかかった場面で、一番いい球を投げねばならないのだから過酷だ。名捕手で広島で監督も務めた達川光男さんも、“抑えは3年が限界じゃろ”と言っていた。 まず先発転向する際、その疲労の蓄積が響く。次に抑えは、藤川のような浮き上がるようなストレートの速さや、大魔神、佐々木のフォークのように特殊球で打ち取るタイプのピッチャーが多いため、長いイニングを投げることに適さない。つまりもたないのだ。これが、適性。過去に抑えから先発転向に成功したピッチャーを見ると制球力とスタミナに優れている。藤川の場合、当時の岡田監督がそこを見極めて、逆に先発から中継ぎへ転向させて大成功させた」 制球力とスタミナという条件を藤川は今のところ満たせていない。3年前にトミー・ジョン手術を受けていて、まだ肘の状態も万全とは言えないだけに、なおさら不安材料は多い。 前述の三宅博さんは「幸いにして若い先発ピッチャーが出てきている。短いイニングに全力で腕を振って投げることができるならば、昔のJFKじゃないけれど、ドリスとマテオにつなぐ1イニングを藤川に任せるという配置転換があってもいいのではないか」とも提案する。 ただ、藤川は「20歳やそこらの選手じゃないんだから、内容や、成長など関係ない。結果がすべて」という信念を持って先発マウンドに上がっている。その気持ちも大事にしてあげねばならないだろう。 10日の巨人戦が雨で流れたことで、阪神はローテーションの再編を余儀なくされることになった。藤川が予定通りに週末の横浜DeNAのカードに先発登板するかどうかは未定だが、いずれにしろ、次回先発は、藤川にとってローテの座を賭けた“ラストチャンス”になることは間違いない。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)