トム・ハンクスが中年の危機に遭遇 どうなる?『王様のためのホログラム』
直近、公開の『インフェルノ』『ハドソン川の奇跡』では、渋くてクールな演技を見せつけてくれたトム・ハンクス(60)。2月10日から公開の『王様のためのホログラム』でトムはかなり冴えない中年サラリーマン、アラン・クレイを演じている。 アランは大企業の役員を務めていたが、業績悪化の責任を問われて解任され、立派な車も家も美しい妻もすべてを失う、絵に描いたような転落人生の描写から始まる。しかし人生の惨さを嘆いてばかりはいられない。愛娘の養育費を支払うため、IT企業に転職したアランを待ち受けていたのは、サウジアラビア国王に最先端映像装置(3Dホログラム)を売りに行くという試練?だった。
そもそも、サウジアラビアの王子と知り合いだと面接時に話してしまったのが事の発端。言われるがままに現地に赴いてみると、米国での当たり前は通じない。ITに今や欠かせないWi-Fiもつながらない上に、ランチを食べる店さえない。抗議する担当者も居留守を使っているのか、いつも不在。3Dホログラムのプレゼンをしようにも国王はいつ現れるのか、わからない。アランは決してダメなサラリーマンではない。しかし、独特の文化やめちゃくちゃな現地ルール、ゆったりとした時間の流れといい加減さが、アランの眉間のシワをより一層深くしていく。
何かのせいにして、弱音を吐いて、やけくそになって、今までの自分を壊したとき、自然と流れが自分に味方することもある。アランは同作の中でジェットコースターの下り坂のような体験を何度もする。 終盤に差し掛かるにつれ、砂漠の風景の中で浮きまくっていたアランの姿が、馴染んでいく。果たして、王様は3Dホログラムを気に入ってくれるのか? アランは素晴らしいと思える人生をもう一度取り戻せるのか? 細かい場面転換に一喜一憂、思わぬ方向に進む人生は面白い。 原作は『驚くべき天才の胸もはりさけんばかりの奮闘記』がデビュー作にして、ベストセラーとなったデイヴ・エガーズ。トムが2012年に同作を大絶賛するツイートから4年の歳月を経て、主演映画が実現した。トムが惚れ込んだ小説には、言葉のひとつひとつにも力を感じる。
『王様のためのホログラム』2017年2月10日(金)、TOHOシネマズ シャンテ他にて全国ロードショー、(C) 2016 HOLOGRAM FOR THE KING LTD. ALL RIGHTS RESERVED. 配給:ポニーキャニオン ■■知ってる?■■ サウジアラビアではイスラーム法が適用されているので、一夫多妻制をとっている。男性は4人まで妻を持つことができる。ただし4人というのは一度に持てる人数。結婚離婚を繰り返せば、何人でも妻を持てるし、側室の数には制限はない。初代の王の息子が30~50人くらいいたというので、7代目の現在は何千人になっていると推測できる。