彦根総合の編入学生「ハッチー」 長打力磨きベンチ入り センバツ
チームメートが一目置く努力家は転校生だ。春夏通じて初の甲子園となる彦根総合(滋賀)が22日、第95回記念選抜高校野球大会で初戦に臨む。「ハッチー」の愛称で親しまれる背番号13の蜂谷(はちや)泰生(たいせい)選手(2年)は元々、別の高校で甲子園を目指していた。 蜂谷選手は2021年、今回のセンバツに出場した北陸(福井)に入学した。北陸の野球部は走り込みのメニューが厳しく、まず約2キロを一定のタイムで走れなければその後の練習に参加できなかった。蜂谷選手は走るのが苦手。一時はマネジャー転向を考えた。そんな時、知人を介して彦根総合の宮崎裕也監督(61)から「野球をやめるのはもったいない」と声を掛けられた。 彦根総合の松本隆理事長(78)は家庭の事情で高校進学を諦めて苦労した自身の経験から、さまざまな事情で高校生活を続けるのが難しくなった生徒を積極的に受け入れている。蜂谷選手は滋賀県出身ということもあり22年4月、彦根総合に編入学。1年生として甲子園を目指し新たなスタートを切った。 1年生は授業が終わるのが遅く、平日の練習時間は1時間半と短い。さらに高野連の規定で、蜂谷選手が公式戦に出られるのは2年生までになる。「自分には時間がない」と、毎朝4時に起きて素振りや筋力トレーニングに励み、体重は編入時から約7キロ増加。ベンチプレスは90キロ以上を持ち上げられるようになった。持ち味の長打力を磨き、紅白戦でホームランを打ったことも。宮崎監督から試合の流れを変える一打を期待され、甲子園のメンバー入りを果たした。 一方で北陸時代、ついていくのに苦労した走り込みについて「足の速さや忍耐力もすごく大事だということを学んだ」と振り返り、「二つの学校での練習があって今がある」と感謝する。18日の初戦で敗れた北陸の笹井多輝(たき)主将(3年)からは「俺たちの分も頑張ってな」とエールをもらったという。以前のチームメートのためにも、ハッチーはまなじりを決して、渾身(こんしん)の一振りに懸けている。【飯塚りりん】