マスク氏、自身のカルト的人気が頼り-株主に巨額報酬の承認求める
(ブルームバーグ): 米テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は、同社の投資家に対して、これまでで最大級の要請を行っている。
株主が2018年にマスク氏の巨額報酬パッケージを承認した当時、一見大胆な目標が含まれていたものの、テスラは電気自動車(EV)市場で勝ち組だった。
マスク氏とテスラの取締役会は17日に提出した24年の委任状で、今年の株主総会でも当時と同じ報酬パッケージを承認するよう株主に要請。18年以降に状況が大きく変化したという事実よりも、マスク氏のカルト的な人気や、ここ6年間のテスラ株約700%上昇で同氏が果たした役割が重視されることに賭けている。
最も注目すべきなのは、問題のマスク氏の18年報酬について、デラウェア州の衡平法裁判所が今年に入り無効との判断を下したことだ。同裁判所のキャスリーン・マコーミック裁判長は、同社の取締役会が投資家の利益を最優先していないとの見解を示した。
マスク氏にとって直ちにリスクにさらされるのは、ブルームバーグ・ビリオネア指数に基づくと、同氏の純資産の4分の1近くを占めるテスラのストックオプションだ。しかし、委任状によれば、同氏のCEOとしての進退にも影響する恐れがある。
委任状によると、「18年のCEO成果報酬が承認されない場合、テスラはマスク氏と代わりの報酬プランについて交渉する必要があるかもしれない」。そうなった場合、「同CEOの報酬がさらに遅れるリスクがあり、テスラに時間とエネルギーを費やし続ける同氏のインセンティブに影響する可能性がある」という。
マスク氏の前例のない報酬パッケージは、テスラの時価総額、売上高、調整後利益に関連する目標の達成状況に応じて、12のトランシェから成るオプションを同氏に付与する形となっている。各トランシェはテスラの発行済み株式の1%に相当する。
現在はテスラにとって厄介な時期でもある。同社は成長鈍化を背景に、従業員の10%以上の削減を進めているほか、株価は年初来で約37%下落し、S&P500種株価指数の構成銘柄で2番目に悪いパフォーマンスとなっている。