農繁期の葉タバコ農家に強力助っ人 高校生がマッチングで短期バイト
全国有数の葉タバコ産地の熊本県あさぎり町は、農繁期の葉タバコ農家に、高校生のアルバイトを紹介する事業を軌道に乗せた。進路が決まり、卒業まで時間のできた高校生が2月に農家を回り、苗の仮植作業を手伝う。産地を維持する強力な助っ人となっている。 4年前から実施し、延べ124人の高校生が参加し、18の農家・生産組合が活用した。 葉タバコは多くの工程が機械化されているが、苗箱に芽生えた小さな苗を細かい区画に分かれた育苗箱に移す仮植は全て手作業。同産地では2月の数日間に集中しており、農家はその期間の人手の確保が難しくなっていた。そこで町は高校卒業が近く、家庭学習期間に入った近隣の高校3年生からアルバイトを募る体制を整えた。 農家が町商工観光課内にある無料職業紹介所に求人を出し、町の担当者は地域の高校を回って参加を呼びかける。行政と民間の橋渡し役である町委嘱のプロジェクトマネージャーが、高校生と農家をマッチングする。事業予算はゼロで、関係機関の協力だけで運用する。 今年は2月中旬の5日間、7人が5戸の農家・組合のハウスで午前8時から午後5時まで働いた。「社会に出る高校生に労働の対価が分かるように」と、農家は時給900円分を現金で手渡した。 町内へ就職が決まった高田祥稀さん(18)は、シルバー人材に混ざり2日半汗を流した。はしで小さな苗を移し替える作業に最初は戸惑ったが、慣れたら誰よりも早くできるようになった。高田さんは「普段見るのは大きくなった葉タバコだけ。参加して農家の大変さを知ることができた」と話した。農家の源島真弓さん(48)は「力仕事もお願いでき、作業場に活気が出た」と歓迎していた。 仮植作業の人手不足は、葉タバコ産地共通の悩みだ。全国たばこ耕作組合中央会は「こうしたマッチングの取り組みは珍しい」とする。(柴田真希都)
日本農業新聞