刺激的な”不倫”の和歌に櫻坂46・遠藤理子もタジタジ…作家・佐々木良が語る万葉集の魅力<最強の時間割>
民放公式テレビ配信サービス・TVer初の完全オリジナル番組「最強の時間割~若者に本気で伝えたい授業~」シーズン2のLesson10が1月19日に放送された。万葉集を若者言葉に訳した本「愛するよりも愛されたい」で一躍ベストセラー作家となった佐々木良が登場。万葉集を読み解きながら、現代を生きるヒントを届けた。 【写真】佐々木良による和歌の解説に興味津々の秋元真夏 ■「最強の時間割」とは 「最強の時間割 ~若者に本気で伝えたい授業~」は、さまざまな業界のトップランナーを講師として招き、学生や社会人に「知っておいてよかった」と思える“考え方のヒント”を届ける民放公式テレビ配信サービス「TVer(ティーバー)」の完全オリジナル番組。 2022年12月から約半年にわたり、放送された同番組が好評を受けて帰ってきた。シーズン2は11月3日よりスタートし、シーズン1に引き続きラランド・ニシダが副担任役、ラランド・サーヤが生徒役。そして新しく生徒役として元乃木坂46の秋元真夏が参加する。 ■ベストセラー作家・佐々木良の愛読書は、まさかのギャル雑誌 今回の講師は、ベストセラー作家の佐々木良。一年前まで無名の作家だったが、万葉集を若者言葉に訳した本「愛するよりも愛されたい」を出版したところ、累計17万部を売り上げて一気にベストセラー作家の仲間入りを果たした。2023年の年間売上ランキングで、あの村上春樹の6年ぶりとなる最新長編「街とその不確かな壁」を押さえて見事一位となった同作はどんな内容なのか。 万葉集は約1300年前の奈良時代につくられた日本最古の和歌集。4500首ほどの和歌が掲載されているが、じっくり読んだことのある人は少ないのではないだろうか。現代の人が読んでも分からないというイメージから読まず嫌いの人も多いだろう。しかし、佐々木はいわゆるラブレターのような恋の歌が多く、実は簡単な言葉で書かれていると早速そのイメージを覆す。 手始めに佐々木が紹介したのは、「我のみぞ/君には恋ふる/我が背子が/恋ふといふことは/言のなぐさぞ」という女性が男性に送った恋の歌。パッと読んだだけでは意味が理解できないその歌を佐々木が若者言葉に訳したのが、「うちだけやん愛してんのは/あんたは『好き』っていうてくるけど口だけやん」だ。こうして訳したものを聞くと、意外な親近感を覚える。 ほとんどが恋の歌だという万葉集。そこから当時の人たちの色んな恋愛事情が浮かび上がってくる。「君に恋ひ/うらぶれ居れば/悔しくも/我が下紐の/結ふ手いたづらに」は好きな男性を家で待っている女性の歌。「『そろそろ彼ピ帰ってくる~』って待ってんねんけど/遅すぎてイライラしてきた」と訳した。「我が下紐の/結ふ手いたづらに」はソワソワしながらコートを脱ぎ着している図をイメージするといいらしい。 佐々木がこうしたギャル語を多用するのは、歌の作者が10~20代であるため。同じ年代の若者言葉で訳したいと考えた佐々木の愛読者はなんと、姫ギャル系ファッション雑誌の「小悪魔 ageha」。雑誌を読み、ギャルが使う言葉を勉強しているという。その結果、若者の心をぐっと掴んだ佐々木だが、一方で業界のお偉いさんから怪訝な顔をされたことも。しかし、「あなたの服キレイだね」という言葉一つとっても「あなた今日かわいいね」「一目惚れしました」といった風に色んな意味に捉えることができるとした上で、佐々木は「その時代に合わせた現代語訳が出てくるのが万葉集訳の面白いところ」と語った。 ■恋に貴賎はないことを示す天皇の歌とは? 万葉集には純愛だけではなく不倫の歌も多くあり、その一つが「紅の/深染めの衣を/下に着ば/人の見らくに/にほひ出でむかも」というもの。男性が不倫相手の女性に送ったこの歌を佐々木は「そんなスケスケのやらしい下着つけてたら/わてらの不倫がバレるやん」と訳している。深いのはその背景。当時は植物で衣類を染めていたことから、その香りで周囲に自分たちの関係がバレてしまうかもしれないと焦る男性の気持ちが綴られている。 身分が高い人の不倫の歌「人言を/繁み言痛み/おのが世に/いまだ渡らぬ/朝川渡る(訳:みんなに噂されるのマジ無理なんで/不倫するのはこっそり明け方/それじゃいってきまーす!)」など、あまりに刺激的な不倫の歌に遠藤理子(櫻坂46)も思わずタジタジ。しかし、当時は結婚年齢が早く遠藤と変わらない10代の若者が書いた和歌も多くあるという。寿命が短く、死が身近にあったことも不倫が横行していた理由の一つと佐々木は考えている。 また、万葉集は様々な身分の人が詠んだ歌が収められているのも特徴。例えば、「籠もよ/ み籠持ち/ふくしもよ/みぶくし持ち」で始まる最初の歌は雄略天皇が詠んだもので、ナンパの歌とも解釈できるそうだ。身分の差はあれど、恋に貴賎はない。天皇の歌を最初に持ってきたのは、「民間人と天皇の近さを示すためではないか」と佐々木は考察した。 645年に中大兄皇子と大化の改新を行った藤原鎌足の歌も。「我れはもや/安見児得たり/皆人の/得かてにすいとふ/安見児得たり」という歌に出てくる“安見児”は天皇のもとで働いていた女性。当時、天皇以外の人と結婚できなかった彼女にアタックしていた鎌足の燃え上がる恋が綴られた歌の現代語訳にサーヤたちが挑戦した。 それぞれの感性に基づく訳が飛び出す中、「安見児誰のもーん?俺のもーん!」という現役ギャル・あおぽんの訳や、サーヤの「【速報】やすみこイケたンゴwwww」という5ちゃんねらー的訳が異彩を放つ。 そんな風に意味が分からなくても分からないなりに訳すのが大事だという佐々木。番組恒例の質問「カッコいい大人とは?」という質問に「分からないことを分からないと言える大人」と回答し、番組を締め括った。 ■文/苫とり子