「線香あげたら死を認めちゃったことになるのが嫌」娘との別れの理由を探し続ける母【熱海土石流災害3年】
静岡放送
2021年7月、静岡県熱海市伊豆山地区で発生した土石流災害では28人の尊い命が失われました。「なぜ、家族が亡くなったのか」。遺族にとっての3年間は、その答えを探し求める日々でした。 【写真を見る】「線香あげたら死を認めちゃったことになるのが嫌」娘との別れの理由を探し続ける母【熱海土石流災害3年】 慰霊祭に出席した遺族の一人、小磯洋子さん(74)。娘の西澤友紀さん(44)を亡くしました。 <小磯洋子さん(74)> 「発災の日と同じ苦しみを今も抱えています」 友紀さんは母の近くで暮らしたいと発災の2年ほど前に、神奈川県から伊豆山に引っ越してきました。 あの日、崩れた土砂は友紀さん家族の暮らすアパートを直撃。すぐ近くにある小磯さんの自宅は数メートルの差で難を逃れました。 <小磯洋子さん> 「消防署の人に『あそこに娘が住んでいるから、アパートがあるからすぐ見てください』と言ったら『ああ、あそこはもうありません』って言われたんですよね」 友紀さんは自らの命をかけて、4歳の我が子を必死に守り抜いたといいます。 その後、明らかになったのが土石流の起点にあった違法な盛り土の存在。土石流は“人災”ではなかったのか。小磯さんは声を上げ続けました。 <小磯洋子さん> 「なぜ娘が亡くならなければならなかったのか、多くの人が亡くならなければならなかったのか、そこのところが済まなければ、前へ進めません」 小磯さんは家族の希望もあり、2023年11月、借り上げ住宅から伊豆山の自宅に戻ってきました。3年が経っても線香は自分であげたことはありません。 <小磯洋子さん> 「お線香あげたら(娘の死を)認めちゃったとなるのが嫌なので…どうもあげる気にならない」 伊豆山地区を見下ろす小さなカフェ。土石流の影響でしばらく開けていませんでしたが、土日限定で再開しました。 小磯さんのお姉さんも時々駆けつけてくれます。 <小磯さんの姉木部和子さん(80)> 「普段は泣いているんですよ、毎日。泣かない日はないくらいなんだけど、私が来ると冗談言ったりテレビ見て笑いながら、それを聞いてるのが旦那さんもね、笑い声聞こえるのがほっとするって言うもんでね」 このカフェは、歌が大好きでバンドもやっていた友紀さんとの思い出の場所です。