ベン・ホワイト。フットボールの試合を見ない世界有数の選手
文 田島 大 今季のプレミアリーグは佳境を迎え、優勝争いも上位3チームに絞られた。残り11試合の状況で、2ポイント差の中にリバプール、マンチェスター・シティ、アーセナルの3チームがひしめく大混戦。そして今週末にはリバプールとシティの首位攻防戦が繰り広げられる。世界中のフットボールファンが注目する大一番だが、そんなライバル勢のビッグゲームを見ないかもしれない選手がいる。アーセナルのDFベン・ホワイト(26歳)である。
家に帰ったらフットボールを除外
ホワイトは“サッカーが好きじゃない選手”として知られている。過去のインタビューで「僕はフットボールの試合を見ない。子どもの頃から見てこなかったし、今も見ない」と言い放って周囲を驚かせた。無論、本当に嫌いならばアーセナルのレギュラーとして活躍することなどできない。ミケル・アルテタ監督もホワイトの練習姿勢について「まるでUEFAチャンピオンズリーグ決勝でプレーするかのように練習する」とドキュメンタリー番組内で称えたことがある。 それでも、スタジアムや練習場を離れて家に帰れば、完全にフットボールをシャットアウトするという。「自分は切り替えるのが得意なのさ」とホワイトは英紙『The Guardian』のインタビューに語っている。「皆さんからは、フットボールが好きじゃない選手と思われているよね。家に帰ったら、もうフットボールは頭の中にないんだ。普通の人と同じようにリラックスするのさ」 しかし、ひとたび練習場に足を踏み入れれば、監督が語ったように強度の高いプレーを繰り広げる。彼は生粋の負けず嫌いなのだ。Unoのようなカードゲームの時でさえ本気になるという。「どんなことでも勝ちたいんだ。家で妻と一緒にいろいろなゲームをするけど、決して妻に勝たせない。僕は子どもの頃からいつもアグレッシブにプレーし、いつも勝とうと必死だったよ」
見なくても戦術理解度は高い
2021年にアーセナルに加入したホワイトは、アルテタ監督が求める複雑な戦術のなかでカギを握るSBとしてプレーする。どうやら、サッカーを見なくても戦術理解度を高めることは可能なようだ。その点についてホワイトは監督を称える。 「いつ、どこにポジションを取るべきか、たくさん指示を受けたんだ。ミケル(アルテタ)はシンプルに教えてくれるので、彼のような監督がいれば比較的簡単なのさ。大半の選手がこのポジションでプレーできるはずさ。そもそもアーセナルでプレーするためにはテクニック、強さ、スピードを兼ね備えている必要がある。だから、うちにいる選手の大半はこのポジションでプレーできるはずさ」 ホワイトは今季アーセナルがゴールを量産しているセットプレーでも大事な役割を任されている。相手GKの前に立ってブロックするのだ。当然、ゴール前は肉弾戦になるが、勝つためなら迷わず体を張るという。 「いろいろなことが起こるよ。足を踏まれたり、肘打ちがあったり。でも気にしない。僕は相手の前に立ち、どうなるか様子を見るのさ。ネットに投稿される映像を見ると、かなり激しい。それも勝つためなら何でもやるという話につながるのさ」