寄せ植えの"美"は細部から 上田広樹さんのこだわりに学ぶ〈流行りのニュアンスカラー、どう活かす?〉
『趣味の園芸』2023年12月号の「2つのメソッドで美しく! 冬の寄せ植えデザイン帖」では、年間1000鉢近くの寄せ植えをつくるという園芸家の上田広樹さんが、初めてでもできる素敵な寄せ植えづくりのコツを教えてくれました。こぼれ話では、上田さんが細部までこだわってストイックにつくりあげた冬の寄せ植えを、さらに紹介します! 前編では、器選びのポイントを教えていただきました。 後編では、上田さんの作品から、ニュアンスカラーの品種の使い方を探ります。 パンジー、ビオラを使ったみんなの寄せ植え写真 上田広樹(以下、上):早速ですが、こちらをご覧ください。
【使用した植物】 ・ビオラ 「ヌーヴェルヴァーグ ボジョレー」(3株) ・レプティネラ 'プラッツ・ブラック'(1株。手前右) ・クローバー 'ハートブレーカー'(1株を分けて大きい方を手前左、小さい方を右奥に) ・キンギョソウ 'ブランルージュムーン'
上:主役のビオラは3株とも「ヌーヴェルヴァーグ」から選抜された「ボジョレー」です。何色とも言い難い、典型的なニュアンスカラーですね。ダークカラーで、中心のブロンズ系の色合いが強いのが特徴です。渋い色合いながら、花弁は丸みを帯びていてシルエットは優しいのもポイントです。 リーフは基本的にダークトーンのものを選び、左側の「ボジョレー」に合わせてクリーミーな色合いの斑が入ったキンギョソウも使いました。鉢はブリキ製で、ブロンズ色のベースにアンティーク加工が施されたものを合わせています。 編:大人っぽい、かっこいい寄せ植えですね。 上:続いてはリースです。
【使用した植物】 ・ハボタン 'ヴィンテージブーケ'(多粒まきのポット苗を4株) ・ネメシア 'ブラックベリー'(4株) ・シルバーリーフのガザニア(3株) ・リシマキア'ミッドナイトサン'
上:主役は渋みのあるアッシュカラーのハボタンです。ハボタンでリースをつくるときは、一つのポットに小さな株がいくつか植えられた多粒まきの苗を使うことが多いです。大きな苗を使うより、ナチュラルな印象になります。 リーフは、シルバーリーフのガザニアとダークカラーのリシマキアを合わせています。リシマキアは寒くなるともっと黒くなりますよ。 注目してほしいのが、ネメシアです。リースにはビオラを使うことが多いのですが、ここではあえてネメシアを使っています。ビオラはリースでも寄せ植えでも使いやすい植物ですが、ビオラよりも一つ一つの花が小さいネメシアを合わせても、ハボタンがよく引き立たちます。この品種は比較的コンパクトにまとまるので、リースにもおすすめです。花色もハボタンと相性がよいですね。 編:花が暗い色合いのネメシアだけとは思えない華やかさですね。 上:決して華やかな花を使っているわけではありませんが、色の組み合わせ次第で豪華にすることができます。 1つ目の寄せ植えのビオラや、リースのハボタンのような複雑な色合いの植物を主役にするときのポイントは、明るく、はっきりとした色の花を使わない。これに尽きます。リースのネメシアのように、暗い色ならはっきりした色合いでもOKです。もちろん、作品のテイストにもよりますが。 リーフも主張しすぎず、主役をバランスよく引き立ててくれるものを選びましょう。例えば、1つめの寄せ植えで使用したクローバーやレプティネラなどは、くすんだ色合いでニュアンスカラーともよく合います。 編:前編の鉢もそうでしたが、先生は植物も細かく見ていますね。 上:色や形などの細かな違いに注目すると、園芸店で植物を見るのもより楽しくなると思いますよ。ぜひ寄せ植えに挑戦してみてください! ●『趣味の園芸』2023年12月号「2つのメソッドで美しく! 冬の寄せ植えデザイン帖」ウェブ限定!趣味の園芸テキストこぼれ話 後編より