就活本格スタート、学生の内々定を急ぐ企業「政府の日程を守っていたら人が採れない」
2025年春卒の学生たちを対象にした会社説明会が1日、全国で解禁され、広島県でも就職活動が本格的にスタートした。人手不足を受け、企業が採用日程を前倒したり、待遇面を強調したりする動きが強まる。オンライン形式の定着もあり、学生は企業を選びやすくなる一方、中小企業は獲得競争の激化を懸念する。 【画像】就活、会社説明会が解禁 就職情報会社マイナビ(東京)は1日、理系学生向けの合同企業説明会を広島市東区の広島コンベンションホールで開いた。理系人材の採用日程が早まる中、前倒しで開催し、広島県内外の55社が参加。学生約150人が訪れ、各社のブースで仕事の内容ややりがいを熱心に聞いた。 参加した電気設備工事の中電工(中区)は今年から、福利厚生をまとめたパンフレットを学生の保護者に送る。担当者は「家族の後押しも受け、内定辞退を減らしたい。選ばれる待遇で応える」と力を込める。 会場には半導体受託生産の世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)の子会社JASM(熊本県菊陽町)もブースを構えた。JASMは、2月下旬に菊陽町で開所したTSMCの工場を運営する。学部卒で最大約28万円の初任給を強調。既に採用予定数の約半分の内々定を出したという。 会場を訪れた広島県内の大学3年生(21)=安佐南区=は「既に内々定をもらった友人が何人もいる。出遅れたと感じる」と明かす。 新型コロナウイルス禍で定着したオンライン化の流れも強まる。リクルート(東京)は今年、対面の合同説明会を全てオンラインにした。「移動の負担が減らせ、学生は遠くの企業ともマッチングできる」と説明する。 政府は採用活動の解禁について会社説明会は3月1日、選考活動は6月1日、正式な内定は10月1日と呼びかけている。ただ、リクルートの研究機関、就職みらい研究所の調査では、2月までに内々定を得た学生の割合は23・9%と前年同月から4・0ポイント上がった。 広島県内のある建設業は3月にも内々定を出し始める。「政府の日程を守っていたら人が採れない」と漏らす。 マイナビ広島営業部の柏木佑一部長は「採用の前倒しが進む一方、学生は複数の内定から条件の良い企業を選ぶため、採用活動は長引くだろう」とみる。
中国新聞社