牛の受精卵移植で三つ子誕生 世界でも希少 宮崎・都城市
宮崎県都城市の和牛繁殖を手掛ける農場で、移植した凍結受精卵一つから三つ子が生まれたことが分かった。日本獣医生命科学大学の牛島仁教授によると「牛の受精卵移植(ET)で三つ子が生まれたとの報告は世界的にも見当たらず、日本で初めてのことだろう」とみる。子牛は3頭とも雌で、小さく生まれたが元気に育っている。 三つ子は母牛約500頭を飼う(株)ランズの志和池農場で交雑種(F1)に移植し、通常(285日)より1週間ほど早く7月1日に生まれた。子宮の中で3個に分割したとみられる。体重は平均で23キロと通常の3分の2程度だったが、成長するには十分の大きさだった。三つ子の血統は父が「英白清」、母の父が「諒太郎」。 同社の今村幸博取締役によると、人がいない時に1頭が生まれており、2頭目からは人が介助した。1頭目が別の牛から出た可能性や、誤って二つの卵を移植してしまった可能性があったため、遺伝子検査を実施。11月下旬に「親子判定不一致なし」との検査結果を受け取った。 牛は初産で、分娩(ぶんべん)後も健康だった。子牛は生後、1頭が肺炎になったが、回復。生まれた順に「むちこ」「あこ」「ぱく」と名付けられ、来春の出荷に向けて大切に育てられている。 移植を手がけた会社の轟木淳一代表によると、受精卵は7日目の普通ランク。一つが二つに割れ、その片方がさらに二つに割れたとみるが、「割球には2日ほどの猶予しかない。本当にどういうふうに起きたのか分からない」と目を丸くする。 牛島教授は「双子の移植であっても事故率が高く、片方が死ぬことが多い。三つ子の誕生は、きれいな授精や移植の操作による結果だろう。順調に育てている農場の管理も素晴らしい」と話す。
日本農業新聞