イスラエルがベイルート南部空爆、子供4人含む18人死亡とレバノン当局 主要病院付近に着弾
レバノン保健省は22日、前日に首都ベイルート南部の主要政府病院付近であったイスラエルの空爆で、子供4人を含む少なくとも18人が死亡し、60人が負傷したと発表した。 21日夜の空爆では、ラフィク・ハリリ大学病院から約50メートルのジュナ地区で少なくとも3棟の建物が破壊された。 首都全域では少なくとも13件の攻撃が報告された。レバノン保健省は、このうちの一つの攻撃がラフィク・ハリリ大学病院に「大きな損害」をもたらしたとした。 イスラエル軍は同病院付近にある「(イスラム教シーア派組織)ヒズボラのテロリストの標的」を攻撃したとしているが、詳細は明かさなかった。同軍は、病院を標的にはしておらず、病院の運営への影響はないと主張した。 また、ヒズボラが組織的に、自分たちの資産を民間人の生活拠点の中に埋め込んでいると非難した。 イスラエル軍は攻撃の約15分前、ベイルート南部のいくつかの場所から離れるよう地元住民に警告していた。ただ、ラフィク・ハリリ病院の周辺地域は警告の対象ではなかった。 空爆当時に同病院付近にいたBBCのプロデューサーは、大きなドカンという音が聞こえて人々は走って逃げたと報告した。救急隊員と消防隊員は現場で苦しむ人々を発見した。 22日朝、空爆現場では救助隊が壊れたコンクリートやねじれた金属の山の中を捜索していた。シャベルで掘り起こす人や、素手で作業にあたる人もいた。 空爆を受けたのは、貧しい人口密集地だった。複数階建ての建物が少なくとも3棟倒壊したほか、いくつかの建物が大きな被害を受けた。 救助隊員の1人は、がれきの下にどれくらいの人が閉じ込められているのかわからないと語った。 BBC取材班は1人の遺体が収容されるのを目撃した。 住民の1人は、1台の車がこの地域に入って来たあとに攻撃を受けたと語った。車に誰が乗っていたかはわからないとした。 イスラエル軍はベイルート南部の7カ所を攻撃すると事前に警告していた。こうした地域を捉えた複数動画には、地元住民が車や徒歩で逃げる姿が映っていた。 イスラエル軍の標的の一つは、レバノン唯一の民間空港ベイルート・ラフィク・ハリリ国際空港から約400メートルの場所だった。地元メディアは爆風で吹き飛んだ窓の画像を公開した。 イスラエル軍は「ベイルートにあるヒズボラの武器貯蔵施設、司令部、そのほかのテロ目標」を航空機で攻撃したと発表した。 「目標のいくつかは地下にあり、ヒズボラがテロ攻撃を実行するために使用する航空機材や海運機材も含まれていた」とイスラエル軍は付け加えたが、場所は明らかにしなかった。 イスラエル軍は21日、ベイルート南部の別の病院の下に隠されていたヒズボラの地下室を特定したと発表した。 イスラエル国防軍(IDF)のダニエル・ハガリ報道官は、証拠を提示することなく、ハレト・ヒレクのサヘル病院の地下室に、ヒズボラによるイスラエル攻撃の資金源となっている数億ドルの現金と金塊が保管されていると述べた。 ハガリ氏は、イスラエルが病院そのものを攻撃することはないとも述べた。 一方、同病院の医師たちはイスラエル側の主張を否定している。 22日にはBBC取材班を病院内に案内し、地下には何もないと主張した。 イスラエルはヒズボラとの戦争を、軍事インフラ以外にも拡大したようにみえる。 IDFは20日、ヒズボラの金融網を標的とした攻撃を実施すると発表。ベイルート南郊やレバノン南部・東部で、ヒズボラとつながりのある金融団体の支店を攻撃した。 IDFはヒズボラが強力な支持を得ている地域で、民間人を対象とした金融サービスを提供している銀行アルカード・アルハッサン協会が保有する資金を標的にしたとしている。 イスラエルとアメリカは同銀行について、イランの支援を受けるヒズボラの活動資金調達の隠れみのになっていると非難している。 ヒズボラのモハメド・アフィフ報道官は22日、同銀行は「このような侵略を予期していた」とし、銀行側は預金者に対する義務を果たすだろうと付け加えた。 ■米特使がベイルート入り 21日には、戦争終結に向けた交渉の可能性を模索するため、アメリカのアモス・ホックスティーン中東特別大使がベイルートに到着した。 ホックスティーン氏は、アメリカはレバノンでの「できるだけ早期の」戦争終結を求めていると語った。 また、レバノンの未来を同地域のほかの紛争と結び付けることは、レバノンの利益にはならないと警告した。これはヒズボラが、パレスチナ・ガザ地区でイスラエルと戦闘を続けるイスラム組織ハマスを支援すると決定したことを指したもの。ヒズボラはイランと密接な関係にあり、ハマスも同様にイランの支援を受けている。 ホックスティーン氏は、旧来の「現状維持」は持続可能ではないとも述べ、国連安全保障理事会決議1701を実施する「包括的合意」を求めた。同決議は、2006年のイスラエルとヒズボラの停戦時に採択され、「ヒズボラによるあらゆる攻撃の即時停止、および、イスラエルによるあらゆる攻撃的軍事作戦の即時停止に基づく戦闘行為の全面停止を求める」という内容。 ヒズボラがレバノン南部に強大な軍事プレゼンスを築き、イスラエルへとロケット弾を発射するのをこの決議は防げなかったと、イスラエルは長年不満を抱えてきた。 ホックスティーン氏がこうした訴えをする間も、ヒズボラはイスラエル北部にロケット弾を発射し続けている。IDFの発表によると、21日深夜くまでに170発のロケット弾がイスラエルに飛来した。 IDFによると、22日にも新たに80発がイスラエルに向けて発射され、ネオ・モルデチャイで4人が負傷した。 ヒズボラは、ハマスがイスラエル南部を襲撃した翌日の昨年10月8日から、ハマスを支援するとして、イスラエル北部にロケット弾を発射している。 両国の境界線を挟んだ戦闘は1年にわたって続いており、イスラエルは10月以降、ヒズボラに対する激しい空爆作戦と地上侵攻作戦を開始した。イスラエルは、ロケット弾によって避難を余儀なくされた住民数万人の安全な帰還を確保したいとしている。 レバノン保健省によると、同国ではこれまでに2400人以上が殺されており、そのうち1800人は直近5週間で死亡している。イスラエル当局は、イスラエル北部と占領下のゴラン高原で59人が殺されたと発表している。 (英語記事 Lebanon says 18 killed in Israeli strike near southern Beirut hospital)
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