緑茶の賢い取り入れ方「カテキン」に口腔疾患に対する予防効果が/医学博士照山裕子
「100歳まで食べられる歯と口の話」<24> 2020年に報告された東北大学の疫学研究で、65歳以上の高齢者2万4147人を対象に行ったソーシャルネットワークと緑茶消費量に関する興味深い報告があります。1カ月に10人以上の友人に会う高齢者は、友人に会わない高齢者に比べ、約2・6本多く歯が残っており、緑茶を1日4杯以上飲む習慣のある人は、飲んでいない人に比べて約1・6本歯が多く残っていたそうです。また、この緑茶の効果は、1カ月に会う友人の数が少ない高齢者で顕著に認められたとのことでした。 日本における緑茶は、お客さまをもてなす場合や会議などでも必ずそばにある身近な存在です。誰かと会う時に摂取する飲料だからという発想でこの研究をデザインされたのかなと想像し、秀逸なセンスに脱帽しました。 緑茶には多くの成分が含まれており、なかでもポリフェノールの一種である「カテキン」には、口腔(こうくう)疾患に対する予防効果があるとわかっています。虫歯や歯周病の原因となる細菌の生育を抑制、虫歯菌の歯面付着を阻害、プラーク中の酸産生を抑制など、エビデンスの強弱はあるものの、総じて「口の健康増進に役立つ」といってよい飲料です。口臭予防の観点から、洗口液の代替品として使える可能性が示唆されるレビューもあります。低濃度フッ化物も含まれているため、初期虫歯の再石灰化促進にも一役買っています。 しかしながら、緑茶摂取にあたっては、配慮すべき点もいくつかあります。渋み成分タンニンが歯のペリクル(糖タンパクでできた被膜)に残留すると、ステイン(着色汚れ)の原因になります。着色成分が口の中にとどまらないよう、飲んだあとは水で軽くゆすぐなどの習慣が歯をきれいに保つ秘訣(ひけつ)です。カフェインも含まれているため、飲む量にも注意です。特に夕方から夜間にかけての摂取は良質な睡眠の妨げにつながるので、時間帯にも気をつけたいところです。