ジュラシック木澤の引退とボディビル新世紀の幕開け 「ベテランの競技」の時代終焉、決勝進出者の半数は20代に
既報の通り、10月6日に開催されたJBBF(日本ボディビル・フィットネス連盟)主催の「第70回日本男子ボディビル選手権」にて、今シーズンでの引退を公表していたジュラシック木澤こと木澤大祐が優勝。20回目の挑戦にしてついに頂点に立ち、18歳から競技を始めた30年に及ぶボディビル人生において有終の美を飾った。 【フォト】これが2024年のトップオブ筋肉だ~2024男子ファイナリスト 「優勝はうれしいですし、やりきったし、本当に最高の結末だったと思います」 大会後、安堵の表情を見せた木澤。すでに本人にYouTubeチャンネルをはじめ多くのメディアで言葉を残し、自身のラストステージに対する思いを語っているが、共通して伝えているのは「若手の勢い」と「ボディビルの未来」に関することだ。 「本当に楽しかったし、若手の勢いもすごく感じました。自分の最後の年に、こうして今後のボディビル界を背負っていくであろう若い選手がたくさん出てきて、彼らと一緒にステージに立つことができて良かったと思います」 世代交代という点では、2019年に当時25歳だった横川尚隆がミスター日本に輝いたのと同時に、20歳の大学2年生だった相澤隼人がファイナリスト入りした頃からその動きは進んできたが、今年はそれがより明確になったと言える。 大学4年生・23歳の刈川啓志郎が3位、27歳の扇谷開登が4位、29歳の寺山諒が5位と、日本選手権初出場の3人が上位に食い込み、喜納穂高(29歳)、杉中一輝(25歳)、吉岡賢輝(29歳)も健在。結果として、12人中6人の半数を20代の選手が占めることとなった(※年齢はエントリー表に則り2024年末の時点)。また、今年のジュニア選手権優勝の渡部史也(23歳)、昨年のジュラシックカップで名を上げた椎名拓也(25歳)が二次ピックアップ審査で3票ずつを獲得し、あと一歩でファイナリスト入りというところまできていた。 当然、新しく入る選手がいれば落ちる選手もいる。須江正尋(57歳)、合戸孝二(63歳)という、昨年までファイナリストの座を守り抜いてきたレジェンドがついに決勝の舞台から姿を消した。決して彼らの力が落ちたわけではない、時代の変化とともに評価されるボディが変わってきたのと並行して、すさまじい若手の突き上げがこのような結果を導いたのであった。 今大会にエントリーした中にも、昨年のジュニア王者・榎田大人(24歳)とその兄・一斗(25歳)、IFBBアジア選手権65kg級優勝の実績を持つ下田亮良(26歳)、学生王者経験のある泉風雅(26歳)、昨年のミスター神奈川・大久保恵介(25歳)ら若手は豊富。さらには、刈川に一度は勝利した宇佐美一歩や今年の学生王者・本多虎之介、今年のミスター千葉に輝いた依知川公平ら“ガクボ勢”の成長にも期待したい。当然、全国各地に強者はまだ眠っているはずだ。 ボディビルの一つの時代が終わり、新時代の到来へ――。 木澤自身も、今後は引き続きトレーナーとして携わり、杉中のようなイズムの継承者の育成とボディビル・フィットネス界の発展に寄与していく。 「競技者として今日まで携わってきて、ボディビルは自分の人生をさまざまな面から支えてくれるものでした。ボディビルが先にあって、そこに人生が後から付いてきたようにも感じています。2週間後には合戸選手と共催の2度目のジュラシックカップを開催しますが、ナチュラルのボディビルがもっとメジャーになって、お客さんもいっぱい集まるように、どんどん盛り上げていきたいと思います」 日本一決戦はこの日がラストステージとなったが、今大会の優勝をもって12月の男子ワールドカップの日本代表選手にも選出されたとのことで、本当のラストステージは12月に持ち越しとなるかもしれない。
「日本代表に選んでいただいたので、チーム日本として最後にもうひと踏ん張りしたいですね」 真の有終の美へ、木澤の歩みはまだ止まらない。
文・写真/木村雄大