なべおさみ 30年以上欠かさぬ散歩 秋田犬とワンダフルな毎日
著名人に健康や元気の秘訣(ひけつ)を語ってもらう企画「だから元気!」。今回は65年以上にわたり芸能界の清濁を併せのんできた俳優なべおさみさん(85)です。足取りは軽く、肌もつややか。健康の源となっているのが、30年以上日課にしてきた愛犬との散歩と断酒です。 (構成・吉澤 塁) 【写真】結婚報告会見を行ったなべやかんと父親のなべおさみ 1991年以来、欠かさないルーティンが愛犬との散歩です。これまでずっと秋田犬と過ごしてきて、今飼っているのはロクちゃん。本名はロクジです。以前の犬は息子(なべやかん)が名付けたゴジラで、「ゴジちゃん」と呼んでいた。だから次は「ロクジ」ということです。 朝6時30分ごろに起床して、7時から散歩をします。冬は5000~9000歩を約1時間半くらい。夏は少し短くて3000~4000歩くらい。雨の日以外は毎日歩きます。汚物の処理などもあって屈伸運動も多い。だから体に効くんです。シャンプーも自分でやっていて、犬と触れ合う時間が憩いですね。 85歳。いつ寿命が果ててもおかしくありません。今は体の調子は良いですが、実は健康に気をつけるようになった、という感覚はないんです。でも20歳の時にひらめきが降りてきました。「この世界で長くやっていこうと思ったら、お酒を断たなければ」と。 それは僕が水原弘さんの付き人をやっていた時。水原さん、勝新太郎さん、石原裕次郎さん、美空ひばりさんの4人が毎年6月、一日も休まず飲み続けるんです。円形のテーブルの真ん中にカナッペと氷と(コニャックの)レミーマルタンを置いて…。そんな大先輩方を見ていて、一日も欠かさずこれだけのお酒を体に入れていることの弊害はないんだろうかと思いました。以来、僕は一滴たりとも酒を飲んでいません。 付き人時代から司会の仕事をしていましたが、日本テレビの「シャボン玉ホリデー」や「ルックルックこんにちは」などで人気が出て、忙しい日々を送るようになりました。そうなると飲み会に誘われる。飲まないと知っていてわざと誘うんです。偉い人から「お前は俺の酒が飲めないのか!」と怒られます。その場を収めるため、わざと涙を流すという特技ができましたね(笑い)。 ご存じの通り、その後は明大の替え玉受験騒動で一気に仕事を失いました。でも今ではいろいろなお芝居に挑戦しています。オーディションもたくさん受けています。マーティン・スコセッシ監督が「沈黙―サイレンス―」を撮る時、村人役を募集していて参加しました。いいところまでいったんですが、監督に「若すぎるんだ」と言われて落ちてしまいました。そう言っていただけたことは私の自慢の一つです。 今後の夢は何かCMに出ること。お金が欲しいからじゃありませんよ。僕のことを知っている世代の皆さんに「なべおさみは元気だ!だから私も頑張らないと」と思ってほしいから。だから僕はずっと走り続けますよ。 ≪8回がん罹患も完治≫実はなべは、過去に8回がんに罹患(りかん)し、そのたび完治してきたという。「がんが見つかるたびに、お医者さんに余命1年と宣告されてきました。でも不思議なもので絶対に回復するんです。病院に行くたびに“まだ生きているんだ”と言われますね」と笑い飛ばした。最近では昨年2月に腎臓がんが発覚。「舞台もありましたが、1カ月ほど入院して4月に手術しました。今は全くなんともありません」と明かした。 ≪8月に舞台出演予定≫夏に舞台「Want to meet!」(8月8~12日、東京・池袋のシアターグリーンBIG TREE THEATER)の出演を控えている。家族の絆や命の尊さを問いかけるハートフルな物語だ。また、YouTubeでは「なべおさみチャンネル」を運営。自身が見た昭和の芸能界の裏話などを語っている。 ◇なべ おさみ 本名渡辺修三。1939年(昭14)5月2日生まれ、東京都出身の85歳。明大在学中に三木鶏郎さんの門下で放送作家として活動。その後付き人として、水原弘さん、勝新太郎さん、ハナ肇さんらに師事した。64年に日本テレビ「シャボン玉ホリデー」での活躍で、お茶の間の人気を獲得した。妻は女優の笹るみ子さんで、16年に死別。