イケアが展開する新ゲーミングコレクション「ブレンボール」のキーマン2人にインタビュー【TGS2024】
東京ゲームショウ2024(TGS2024)の第10ホールにあるイケアブースでは、同社が販売するゲーミング関連商品が展示されている。その中心となるのが、2024年9月から販売を開始した「ブレンボール」だ。この開発に携わった2人に話をうかがった。 【関連画像】ディル氏が座っているのが「ゲーミングラウンジチェア」、ヴァール氏が座っているのが自らデザインした「ゲーミングイージーチェア」。ともにブレンボールの商品 ●「ブレンボール」はより幅広いゲーマーへ向けたコレクション TGS2024の第10ホールにあるイケアブースでインタビューに答えてくれたのは、シニアデザイナーのダーヴィッド・ヴァール氏と、プロジェクトリーダーのフィリプ・ディル氏だ。ヴァール氏は「BRÄNNBOLL/ブレンボール ゲームコレクション」の中心的な商品と言えるゲーミングイージーチェアなどをデザイン。ディル氏はデザイナーから上がって来たデザインに対し、素材を選ぶなどして実際の製品へと落とし込む作業を担当したという。 ――9月から発売が始まったブレンボールというシリーズについて教えて下さい。 ヴァール氏: イケアはこれまでもゲーミングチェアなどをいくつも発売してきましたが、どれも単発の商品でした。それに対し、初めてコレクションという形でローンチしたのがブレンボールです。より多くのゲーマーに向けてどういった商品を提供できるかを考え、特にカジュアルゲーマーに向けてつくっています。 ――ブレンボールとはどういう意味ですか? ディル氏: スウェーデンで楽しまれている野球に似た屋外競技の名前なんです。野球よりもルールがシンプルで誰でも遊べる気軽さがあります。 ――なるほど、ブレンボールのコンセプトに通ずるものがあるからこそのネーミングなんですね。今までもイケアはゲーマー向けの家具を出してきましたが、今回は方向性を大きく変えていますね。 ディル氏: 私たちはゲームを遊ぶ人の家を訪れたり、インタビューをしたりとリサーチを重ねました。そこで分かってきたのが、モバイルゲームが普及してきた今、ゲームで遊ぶのはPCデスクの前でゲーミングチェアに座っているときだけとは限らないということ。家のなかのあらゆるところでゲームは遊ばれているのです。そこでブレンボールは家の中のどこでも快適にゲームで遊べることをコンセプトにし、より生活になじむ商品であることを意識しました。 ――ゲーマー向けの商品として、ほかにどんなことを意識しましたか? ヴァール氏: ブレンボールでは色使いや素材選びといった点で「遊び心」を特に重視しています。これまでのゲーミング関連商品は黒を基調としてネオンカラーをアクセントで入れるといったものが多かったですよね? でも、ゲームプレーヤーの平均年齢は意外と高かったりして、家の中に必ずしもそういった色合いのセットアップがあるわけではないんですよね。そういった意味で、ブレンボールでは日常の生活にうまくなじむ色合いを採り入れています。 先ほど遊び心を重視したと言いましたが、これまでのゲーミング用品にはない、思いがけない機能を盛り込んだりもしています。 ――これまでのイケアのゲーミング関連商品は、PCメーカーのASUSが展開するゲーミングブランドROG(Republic of Gamers)の協力を得てつくられていましたよね。ブレンボールでもそのときの知見が生かされているのですか? ディル氏: ROGとの協業やこれまでの商品づくりで、すごく多くのことを学びましたし、とても良い経験だったと思います。その経験があるからこそ、私たちはまた異なった視点でより多くの方々と接点を持ちたいと思ったわけです。 例えばeスポーツでは他のプレーヤーに対する勝利だったり達成感に重きが置かれたりしています。でも、より広い視点で見てみると、ゲームをするのはリラックスしたいときだったり、現実からちょっと抜け出したいときだったりすることのほうが多いことが分かりました。ブレンボールはそうしたより日常的なゲーム体験に寄り添う商品を目指しています。 ●多目的、多機能、多様性を目指したブレンボール ――ブレンボールには19点の商品があるとうかがいました。その中でもおすすめなものや、自信作はありますか? ヴァール氏: 僕がデザインしたこの「ゲーミングイージーチェア」ですね。 ――ブランコのように座面がつり下げられている構造がユニークですね。 ヴァール氏: レーシングゲームを遊んでいるプレーヤーの動きからインスピレーションを受けてデザインしました。ゲームに熱中して体を傾けると、それに合わせて座面が動くんです。 ほかにも格子柄の丸い「ゲーミングラグ」もかなり注目されていますね。ポーランド人デザイナーの作品です。 もう一つ、膨らまし式ゲーミングラウンジチェアも好評です。ゲームプレーヤーにインタビューをしてわかったのは、床に座ってゲームを楽しまれる人の多さです。最初はソファに座ってゲームを始めても、結局は床に直接座り込んだりする人が多いんですね。そこで床に近いところで居心地良くゲームを楽しむためのアイテムとしてこれをつくりました。 ――持ち上げてみて想像以上に軽くて驚きました。 ディル氏: 今回のコレクション、ブレンボールでは多目的、多機能、多様性であることを心がけています。この膨らまし式ゲーミングラウンジチェアは家のどこにでも気軽に持ち運ぶことができ、ゲーム以外のどんな場面にもすごくよくなじみます。ブレンボールのコンセプトにとてもマッチした商品と言えますね。 ――イケアブースにいらっしゃるTGSの来場者はもちろん、今後はイケアの店舗でより多くのお客さまがブレンボールを目にされることになるわけですが、そうしたお客さま方に向けて、注目してほしい点など何かメッセージはありますか。 ディル氏: このブレンボールはハードコアなゲーマーでも、カジュアルなゲーマーでも、どんなプレーヤーにもマッチする、ゲーミングとホームファニシングの橋渡しになるようなコレクションです。 ゲームのプラットフォームとしては今はモバイルがいちばん大きく、自分がゲーマーであるという意識のない人でも実際にはモバイルゲームをけっこう遊んでいたりするんですよね。 ブレンボールはそんな現代におけるすべてのゲーマーへ向けたセレブレーションだと思っています。ゲームの中と同じように色鮮やかで遊び心に満ちた体験を実生活に投影できるブレンボールを皆さんもぜひ楽しんでください。 (文/稲垣 宗彦=スタジオベントスタッフ、写真/中村 宏) なお、日経クロストレンドでは「東京ゲームショウ2024特設サイト」を公開中です。ぜひ、ご覧ください。 ・日経クロストレンド「東京ゲームショウ2024特設サイト」 https://xtrend.nikkei.com/sp/tgs/
稲垣 宗彦