トランプ氏「関税」明言、輸出に逆風 農産物で譲歩迫る恐れも
輸入解禁品目追加の懸念も
5日投開票の米大統領選で、共和党のトランプ前大統領の返り咲きが決まった。「米国第一主義」を掲げ、米国への輸入品に一律10~20%の関税をかけると明言。専門家からは、農産物で一層の譲歩を迫られかねないとの指摘もある。 米国農務省(USDA)の予測によると、2025年度(24年10月~25年9月)の農産物貿易は、赤字額が425億ドルに上る。米農業団体「ファームビューロー」のアンケートで、トランプ氏は赤字に対し「明らかに海外での不公正な取引慣行の結果」だと指摘。「できる限りの手段を使ってこれらの障壁と戦う」としている。 元農水省職員で環太平洋連携協定(TPP)交渉を担った明治大学農学部の作山巧専任教授は、自動車関税引き上げを交渉のカードとし、農産物でのさらなる譲歩を求めてくる懸念を指摘する。ただ、日本は米国からの輸入で、既に主要品目での関税削減を受け入れている。そのため、交渉では新たな品目の輸入解禁などが要求される可能性があるとみる。 日本政府関係者は「輸出が伸びている中で打撃にならないか」と農産物輸出への影響を懸念する。米国向け農林水産物・食品輸出は、2023年で2062億円で国・地域別で3位となっている。 トランプ氏は第1次政権時、TPPから離脱。その後、自動車への追加関税の発動をちらつかせて日米貿易協定をまとめた。日本は牛肉などでTPPと同水準の関税引き下げをのまされた。来年1月に発足する第2次政権も市場開放圧力を強めてくる可能性がある。 トランプ氏は「ドル安志向」とみられ、生産資材高騰を招く円安が収まり、円高が進むとの見方もある。一方、農林中金総合研究所の南武志理事研究員は、トランプ氏が掲げる関税引き上げで「インフレの懸念が強まり、連邦準備制度理事会(FRB)の利下げペースが想定よりも遅くなることが考えられる」と指摘。日米の金利差は思っていたほど縮まらず、円安ドル高傾向が続く可能性を見通した。
日本農業新聞