スタバ半額、地元企業は1杯130円 中国コーヒーの勝者なき戦い
中国での生き残りをかけ、値下げキャンペーンを積極化するスターバックス。だが、中国地場のライバルたちも競争の手を緩めない。価格競争を主導するのは、瑞幸咖啡(ラッキンコーヒー)と庫迪咖啡(コッティコーヒー)の2社だ。 ラッキンは17年、コッティは22年創業の新興コーヒーチェーン。両社共に低価格を売りにしており、ドリップコーヒーなど複数の商品はクーポン券を活用すれば1杯9.9元(約200円)となる。コッティに至っては40品目に近い商品のほぼすべてを1杯9.9元で提供するほか、一部商品では1杯8.8元(約180円)で購入できるクーポン券すら配布する。 両社とも「定価」は20~35元であるため、5割を超える値引きをしている計算だ。若者を中心に支持を集めており、「味そのものは海外のチェーンと大きくは変わらない」(上海在住の40代女性)との声は多い。 過度な値下げは業績面に影響が出ている。上場するラッキンの24年4~6月期の業績は、売上高は前年同期比で36%増えたものの純利益は13%減だった。ただ、両社の店舗はテイクアウトやデリバリーをメインにしており、座席をほぼ設けていない。店舗運営コストを抑えられることが、店舗空間を重視するスターバックスに対する優位につながっている側面もある。 ●130円のカフェラテまで登場 足元ではさらに格安のコーヒーも登場してきた。コーヒーチェーン「幸運咖(ラッキーカップ)」は今夏よりカフェラテなどを6.6元(約130円)で提供し始めた。ラッキンやコッティよりも3割安い計算となる。 ラッキーカップは茶系飲料チェーン大手の蜜雪氷城(ミーシュエ)が手掛けるコーヒーチェーンだ。「3級都市」といわれる地方都市などを中心に出店を加速しており、中国本土での店舗数は23年に3000を突破した。上海など大都市では郊外などに絞り込んで出店する。店舗運営コストを限りなく削減することで他社が追随できない価格を打ち出しているもようだ。 景気低迷で消費者の財布の紐(ひも)が固くなる中、終わりが見えない中国コーヒーの値下げ合戦。さらなる価格競争が進めば、勝者不在になりかねない。 国慶節(建国記念日)の大型連休では、上海の中心部にある世界最大級の大型店舗「スターバックス リザーブ ロースタリー」に数多くの観光客が押し寄せていた。根強い人気を糧に中国でのコーヒービジネスの先駆者としての地位を取り戻せるか。正念場を迎えつつある。
佐伯 真也