選手村では「LGBTQ+向けマッチングアプリ」の位置情報が"無効"に。その理由とは
2024年7月26日に開幕し、盛り上がりを見せているパリオリンピック。先日、LGBTQ+コミュニティ向けのマッチングアプリ「Grindr(グラインダー)」が、LGBTQ+のアスリートたちの安全を確保するために選手村や競技場内での位置情報機能を無効にすることを発表した。 【写真】LGBTQの旗、いくつ知ってる?レインボーフラッグの種類とその意味
選手のプライバシーを守るために
LGBTQ+コミュニティ向けのマッチングアプリとして、世界中で利用されている「Grindr」。同アプリは7月24日に公式サイトで、パリオリンピックの選手村でのプライバシー強化についての声明を発表。アスリートのプライバシーを守るために、選手村や競技場内での位置情報機能を無効にすることが明らかとなり、このようにつづっている。 「アスリートがカミングアウトしていない場合、またLGBTQ+当事者であることが危険である、あるいは違法な国の出身である場合、Grindrを使用することでアプリ上でアスリートたちを特定し、暴露しようとする詮索好きな個人からカミングアウトされる危険性があります」 同アプリは、2022年に北京で開催された冬季オリンピックの期間中にも、選手村やその他の競技会場内で位置情報機能を無効にし、クィアなアスリートを不要な注目やアウティング(他人の性のあり方を本人の同意なく第三者に暴露する行為のこと)から守ることを選択。 位置情報を利用する「Explore」や「Roam」といった機能以外にも、距離表示機能もデフォルトではオフになるという。しかしユーザーがオンにした場合は、おおよその距離を共有することができるとのこと。この変更については、「アスリートが意図せず居場所を明かしたり、認識されたりする心配をせずにつながることができるようにするため」だと述べている。
アウティングをする記事が公開された過去も
約1万500人ものアスリートが参加しているパリオリンピック。LGBTQ+を公表している選手が過去最多の191人※2024年7月28日時点であると『OutSports』が報道しているが、カミングアウトをしないことを選択していたり、自身の国では違法であるため明かすことができない人もいるだろう。 Grindrがオリンピックでのアプリ利用を取り締まり始めたのは、2016年以降のこと。2016年に『Daily Beast』のライターであるニコ・ハインズ氏が、同年に開催されたリオデジャネイロオリンピックの選手村での「一夜限りの関係」に関する記事を掲載。『NBC NEWS』によると、当初の記事にはハインズ氏がマッチしたアスリートについての記述があったという。 アスリートアライ(Athlete Ally)の創設者兼エグゼクティブ・ディレクターのハドソン・テイラー氏は、「ニコ・ハインズの記事は、危険であると同時に非倫理的だ。ゲイであることが死刑に値する国からオリンピックに出場している選手は、200人以上もいるのです」と同メディアにコメントし、このように語った。 「カミングアウトをしていないアスリートを公表することがもたらす影響を理解していないのは、受け入れがたく、とても不快である。多くのクローズドなアスリートにとって、ネットはLGBTQ+のカルチャーやコミュニティと安全につながることができる唯一の場所かもしれないのです」
Harper's BAZAAR JP