“購入客の約半数が20~30代”アンテプリマ・荻野いづみに聞くワイヤーバッグが若者に“再ヒット”の理由
PVCを見て「なんだこれは?」なんて言われたりも
――ブランドを育てていくなかで、アーティストとの協業や異文化との交流などにフォーカスし続けていらっしゃいますが、それらの取り組みはいつ頃から考えられていたのでしょうか。 モノを売るのではなく、“夢”を売るということをずっと考えていました。持ってくださった方に“夢”を同時に届けたいという想いが強くありましたから。 それに、私自身、現代アートが好きなんです。イタリアのヴェネツィアで2年に1回行われる『ヴェネチア・ビエンナーレ』は、1895年から開催されている現代美術の国際美術展覧会で、私は30年ほど前から毎回参加しています。 40年ほど前、アンテプリマの前に、極東代理店の責任者として携わっていた某イタリアブランドでも、やはりファッションだけでなく現代アート作品に積極的に携わっていたので、影響を受けた面もあると思います。 ――モノに対する付加価値として、現代アートを選ばれたということでしょうか? アーティストたちは神のような存在。自分の表現をするわけだから、彼らにとって納期はあってないようなもの(笑)。彼らが作品を作るときに真剣に考えているのは、自分の目に世界はどんな風に見えていて、自分の作品で何を訴えたいか、ということなんですね。だから、ヴェネチア・ビエンナーレなどを見ると、世界がどこへ向かうかが分かります。 例えば、2年前のビエンナーレでは、女性アーティストによるプリミティブ(原始的)と感じられる作品が多くありました。それを見て、世の中は女性の存在を重視していて、弱い存在のものにフォーカスしている。おそらく、デジタルが行き過ぎているからプリミティブな方向に戻ってきているのかな、と色々と考えさせられ、本当に勉強になりました。 ――アンテプリマにも、その感覚が反映されているわけですね。 そうですね。例えば、PVCという未来的な素材を、とても原始的な手法で編むという“コントラスト”は、ずっと私が重要視しているもの。ブランドを立ち上げた当初は、PVCを初めて見た方に「なんだこれは?」なんて言われたりしたことも、今では良い思い出です(笑)。 コントラストを大切にするのは、私自身の価値観でもあります。ロールス・ロイスに乗せてもらうのも楽しいけど、地下鉄もいい。焼き鳥も食べたいけど、5ツ星レストランも好き。ファッションでもシックな洋服を着たら運動靴を履いてみたりなど、自分のライフスタイルにも取り入れています。