アサヒグループHDの勝木敦志社長 「収益を牽引する」海外事業の売上高を国内の2倍へ My Vision
「当社を買収するには時価総額と有利子負債で最低でも4兆円を要する。それは買収の高いハードルになる。その上で提案があった場合、株主や従業員、取引先、顧客ら全てのステークホルダー(利害関係者)にとって『ベストなオーナーは誰か』ということを、判断する上で大切にしたい。何が何でも買収されたら困るとのスタンスはとらない」 【解説】ビール大手4社トップが考えるビール離れへの対策 --10月の衆院選で与党が過半数割れした 「産業界の持続・成長につながる長期的な視点を持った安定した政権運営を望む。数合わせで右往左往するのはやめていただき、早く国民の幸福につながる政治へと軸を移してほしい」 --経団連が選択的夫婦別姓制度の実現を求めた 「会社として何か動いていることはない。ただ、女性従業員と一緒に海外出張したとき、パスポートとホテルの予約名が異なることでトラブルになったのを目の当たりにした経験がある。これは通称使用の拡大では解決しない。このような不便をかけてはならないと思う」 --先日の米大統領選で共和党のトランプ前大統領が勝利したが影響は 「トランプ氏が掲げる政策は世界経済が大混乱に陥るリスクがある。例えば、米国社会では移民が一定の機能を果たしており、移民対策強化で人手不足が深刻になる。マクロ経済にも大きな影響が出るので避けてほしい」 ■かつき・あつし 青山学院大経営学部卒。1984年、ニッカウヰ(イ)スキー入社。2001年に同社をアサヒビールが買収した後は、主に海外畑を歩む。アサヒグループホールディングス常務取締役や専務取締役などを経て、21年から現職。北海道出身。 ■編集後記 社内では〝有名〟という海外勤務時代の企業買収を巡る失敗談を尋ねると、10年以上も前の出来事をよどみなく語ってくれた。誤情報をつかまされ、大きな損失を出したこと。「毎日、アパートから飛び降りたいと思った」が、訴訟に踏み切って最後は和解を勝ち取ったこと。「自分の力に頼る」タイプだったが、その経験からチームワークの大切さを学んだという。買収された子会社出身であることを含め、これほどの失意や挫折を経験したトップは貴重だ。笑顔で語ってくれた勝木氏、そして会社に対しても、懐の深さに感銘を受けた。(福田涼太郎)