「あなたは私?」と虜にする文章を書く究極のコツ 全員に向けて浅く刺すなら「広いあるある」が有効
そもそも「整ってる」男だいたい存在がうるせえんだよ。声デカいし顔の圧ヤバいし目バッキバキだし、本棚に『嫌われる勇気』と『夢をかなえるゾウ』と『人は話し方が9割』あるし、しょうもない仕事のこと「タスク」とか言うし、なんか海外のほっそい瓶ビールとか飲むだろ。 (kansou「死ぬほどサウナ入ってるのに一回も整ったことないしむしろ乱れてる」より) ■書き手を表現できる手段としても こちらは「特定の誰か」を決めずに「人間の脳に思い浮かぶいけ好かないサウナー」をたとえて言語化した文章なのですが、「声デカい」「顔の圧ヤバい」「目バッキバキ」というぼんやりとしたイメージの中に、『嫌われる勇気』『夢をかなえるゾウ』『人は話し方が9割』と、本のタイトルを限定して挙げています。この部分は「自己啓発本」と置き換えても成立するのですが、あえて固有名詞を使うことで、読者のイメージがより鮮明になると考えました。このように「広いあるある」の中に「狭い固有名詞」を混ぜていくのがポイントです。
また、固有名詞は書き手がどんなカルチャーに触れてきたかを表現できる手段でもあります。M-1グランプリ2023で優勝した令和ロマンも、固有名詞をとても上手く使い、大勢のファンを獲得している芸人です。 例えば、2023年のABCお笑いグランプリでも披露された漫才『back number』は、back numberの男らしくない歌詞をイジるネタなのですが、 「捕獲レベルいくつだ?」「なんでトリコの世界だと思ってんだよ」
「名前のない毒みたいな。アンナチュラルの1話」 といったように、「トリコ」「アンナチュラル」など流れと全く関係ない固有名詞が随所にちりばめられています。 ■「お前は俺か」と思わせて虜にする これらのフレーズの意味を知らない人間にとっては笑えない部分でも、これが刺さる人間にとっては一発で令和ロマンの虜になるキラーワードになります。 人間には自分と近い嗜好(思考)を持つ人間に惹かれる「類似説(resemblance theory)」という習性があります。これは文章も同じ。「お前は俺か」と思ってしまう文章に魅力を感じるのです。